第48章 嫌疑と再会
次々に兵士の愛馬達が戻ってきて、そろそろ予備馬の厩舎に向かおうと思った時だった。
厩舎に向かって何か叫ぶような声と共に駈歩で走ってくる馬の蹄の音が近づいてきた。
「…………ん??」
皆何事かと厩舎をでると、あまり見慣れない中年の兵士が2人騎乗したまま調査兵団の敷地に入ってきた。
「102期で入団をしたクレア・トートという兵士はどこだ?ここにいるか?!」
「……え?」
クレアは耳を疑った。
着用しているジャケットを確認すると、ユニコーンの紋章。この2人は憲兵団だ。
しかしこの2人は名前どころか顔も知らない。
そんな彼らがいったい自分に何の用事なのだろうか。
「おい!102期のクレア・トートだ!いないのか?!」
何やら気が立っている様だ。
余程の急用だと伺えるが、いったい…
少し頭の中で考えを巡らせたかったが、そんな悠長な事もしていられない雰囲気だ。
憲兵の2人はイライラとクレアの名を叫び、周りの調査兵からの視線も痛い。
間に挟まれたクレアは耐えかね仕方なく手を上げた。
「あの、私が102期で入団したクレア・トートです。いったいどの様な御要件でございますか?」
「お前がクレア・トートか…!?」
「はい……」
2人の憲兵は、その幼くも美しく光る小さな姿に雄の本能が擽られたのか、下から上まで下品な視線で舐め回すように見やると、わざとらしく咳払いをした。
「ゴホッ…内地の審議所にて、ザックレー総統がお前に出頭命令を出された。すみやかに準備をせよ。我々とシーナの審議所まで同行するんだ。」
「え?それはいったいどういう事でしょうか?!」
ザックレー総統といえば、全ての兵団のトップに立っている人間だ。
そんな人物がいったいこんな末端の兵士に何の用事があると言うのだ。
それにこの目の前の憲兵は審議所と言った。
審議?自分は何か裁かれなくてはならない様な事をしたのだろうか…
クレアの頭は疑問と混乱でいっぱいだった。