第48章 嫌疑と再会
「ダ、ダメよ…何考えてるの?!」
何だか変に熱を上げそうになっていた自分に気づくと、クレアはかぶりを振りながら両頬を叩いた。
何が起こってるか分からないが非常時である事は確かなのだ。こんな所で1人悶々と熱を上げるなど不謹慎極まり無い。
クレアは窓を閉めると、リヴァイの香りが残る部屋に名残惜しい気持ちを募らせながらも、カギをかけて食堂へと向かった。
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朝食を済ませ、集合場所へと行くと、厩舎の掃除組と、馬回収組の2班にわかれて作業が行われる事になった。
クレアはデイジーの様子が心配で、1分でも早く駆けつけたかったのだが、残念な事に割り当てられたのは厩舎の掃除組の方だった。
避難所まで何度も往復をして馬を移動させるのも大変だが、たった数人で全馬房と、全ての馬具の手入れをするのも果てしなく終わりの見えない過酷な仕事だ。
だが、トロスト区内の遺体回収の方が人数が必要とされていたため、馬回収班はそこまで人数を割けなかったのだろう。
「ふぅ……それじゃあ、始めるか!!」
クレアは潔く諦め熊手を手に取ると、兵士の愛馬用の馬房から掃除を始めていった。
しばらくすると、兵士の愛馬達が次々に回収班に連れられ戻ってきた。
「あ、デイジー!!おかえり!!」
割と最初の方に戻ってきてくれたデイジーに、思わずかけよらずにはいられなかったクレア。
連れてきてくれた先輩兵士に礼を言うと、クレアは手綱を受け取り掃除の済んだ馬房へ入れてやった。
「無事で良かった…慣れない場所で疲れなかった?脚は腫れてない?」
心配で仕方なかったクレアはデイジーの全身をくまなくチェックをすると、ポケットに忍ばせておいた角砂糖を、周りの兵士達に見つからない様にコッソリとデイジーの口の中に入れてやった。
まだまだ再会の喜びに浸っていたいがそうもいかない。
クレアはデイジーの額を何度か愛撫をすると、次々と到着する馬を受け取りに兵門まで向かって行った。