第48章 嫌疑と再会
ーカチャリー
渡されていたカギで中に入ると、1日ぶりに来たのはリヴァイの執務室。
今日この部屋の主が入ってくる事はないが、時間があるのだ。
クレアはいつリヴァイが帰ってきてもキレイな部屋で直ぐに仕事が出来るように掃除を始めた。
掃除とはいっても一昨日の朝にもしたばかりだ。
1日でそこまで汚れる筈はないのだが、時間を持て余してボーッとしているよりは有効な時間の使い方だろう。
クレアは手際よく掃除を始めたいった。
窓を開ければ朝日が昇り、澄んだ空気が執務室内に入ってくる。
ハタキをかけ、床を掃き、部屋の上から下まで丁寧に拭き掃除をしていく。
「ふぅ……こんなものかな……」
だが予想通り、もともとキレイな部屋の掃除など、あっという間に終わってしまった。
クレアは掃除道具を片付け手を洗うと、仕方なくいつも座っているソファに腰掛ける。
自分の体重で少し沈む上等な革張りのソファ。
ふと、自身の右側に寂しさを感じたクレアは思わず誰も座っていない右側を見つめては軽くため息をついた。
恋しい…
この気持ちをどんな言葉で表すのが適当であるかなんて分からない。
でも一番始めに出てきた言葉がこれだった。
壁内で起こった事がまだ何にも分からない。
ペトラは巨人があけた穴を巨人が塞いだと、なんとも奇々怪々な事を言っていたが、そもそもそれも正しい情報なのかも分からない。
こんな分からない事だらけで離れ離れになってしまったリヴァイ。
今は1人ぼっち。
「…リヴァイ兵長……」
恋しさで胸がいっぱいになったしまったクレアは求める様にリヴァイの名を呼んだ。
一昨日の朝、この部屋で会ったのが最後だった。
別れ際にこのソファに腰掛けたままキスをしたのを思い出す。
リヴァイはこのまま抱いてしまいたいとクレアの耳元で囁くと、唇を奪いなかなか離してくれなかった。
「……兵長……」
そんな事を思い出したら、クレアの身体の最奥がズクンと切なく疼きだしてしまった。