第47章 悪夢、再び
「で、ですが……」
なんとなく悪い事をしてしまった様な表情をしているクレアにエルドは優しく続ける。
「本当にいいんだ。これは、せっかくクレアがくれたフレイアの形見だからな。こうしてつけていると、フレイアがいつも一緒にいてくれてる様に感じるんだ。1人で部屋にいる時も、壁外でも、いつも見守ってくれてる様な気分になれるから…チェーンを長い物に変えて身につける事にしたんだ。」
「エルドさん…」
「でも男がピンクの石をつけてるのは少しおかしいかな…?」
少し照れ臭そうに笑うエルドに、クレアの胸はギュッっと締め付けられる。
「そ、そんな事ありません!!きっと、フレイアも同じ気持ちだと思います。エルドさんと出かける日は必ずつけていたネックレスです。エルドさんが今もこうして身につけていてくれれば、フレイアも1番近い場所で見守る事ができる筈ですから……」
「クレア…」
気付けば頭に血がのぼり、叫ぶように訴えてしまっていたクレア。
目には、あと数回まばたきをしてしまえば、流れ出てしまう程涙が込み上げていた。
「す、すみません…出過ぎた事を…」
ハッと我に返り、袖でこぼれそうな涙を拭いながら2度目の謝罪をする。
「いや、そんな事ない。ありがとうクレア。フレイアと親友だったクレアにそう言ってもらえると、俺も救われる。本当にありがとな…」
「あ、いえ…そんな…」
「引き止めて悪かった。ゆっくり休めよ。」
「は、はい!!ありがとう…ございます!」
エルドはクレアの頭をポンと一度撫でると、その手を振って部屋に戻って行った。
フレイアを亡くして間もなく半年がたとうとしている。もう自分は前だけを向いて進み続けているつもりでいたが、ふと後ろを振り返りたくなってしまう時もある。
でも、親友であったフレイアはそんな事、決して望んではいない筈だ。
私もエルドさんの様にしっかり前を見なければ…
そう自分に言い聞かせパンッと自身の頬を叩くと、クレアは大浴場のとびらを開けて中に入って行った。