第47章 悪夢、再び
いったい壁内では何が起こっているのだろうか…
「兵長……」
切なく痛んだ胸をギュッと掴みながらゴロンと仰向けになる。
すると、今は誰も眠ることのなくなった2段ベッドの上の段が目に入った。
「フレイア……」
フレイアが生きていたら、今頃どんな話をしていただろう…お互いの無事を喜び、起こった状況に動揺しながらも懸命に与えられた任務を遂行していただろうか。
今度は亡き親友の面影がちらつき涙が溢れてきてしまう。
「ダ、ダメだ!!」
1人で部屋に籠もってしまうと余計な事を考えてしまう。部屋を出たからと言って、他に話し相手がいるわけではないが、クレアはまだ風呂に入っていなかったため、ひとまず大浴場に行く事にした。
風呂に入るなど日常生活の1つにすぎない。
しかし、黙って1人でいるよりいくらか気が紛れるだろう。
クレアはベッドを飛び跳ねるように勢い良く飛び降りると、手早く支度をして部屋を出た。
「あ、クレア??」
「エルドさん…?」
クレアが大浴場に入ろうとすると、ちょうどエルドが大浴場からでてきた。
「今日はお疲れ。これから風呂か?朝から日没までぶっ通しで討伐だったからな。風呂くらいゆっくり入ってこいよ。」
「あ、ありがとうございます…」
クレアがエルドの気遣いに軽く会釈すると、私服に着替えた胸元からキラリと光る物が見えた。
「あ……」
薄くピンクに光るソレに、思わず食い入る様に見つめてしまったクレア。
「ん…あぁ、コレか?」
クレアの視線に気付いたエルドは私服の襟元から覗く光の正体を取り出し見せてやったのだが…
「す、すみません……」
なんだか悲しい事を思い出させてしまった気分になったクレアは慌てて後ずさる様に頭を下げて謝罪をする。
「いや、いいんだ、気にしないでくれ。」
しかし、エルドは襟元のボタンをしめると頭を下げているクレアの肩をポンと叩いた。