第47章 悪夢、再び
クレアはまだ昨日起こった事について殆ど聞かされていなかった。
だが、壁にあけられた穴を塞ぐために多くの駐屯兵が亡くなったらしい事はなんとなく察しがついていた。
その為、今は一刻も早く巨人を掃討してトロスト区内の安全を確保したいという駐屯兵の意見ももっともだろう。
しかし、巨人の謎が解明ができなければ、人類は巨人に敗北し続けるしかないのだ。
それ故ハンジも黙ってはいない。
「ったくさっきからうるさいなぁ、石頭は。こっちだってエルヴィンの許可は取ってきてるんだ。さすがにここにいる調査兵だけでは人数が足りない。1番簡単な所だけでいいから手伝ってよ。」
「き、貴様誰に向かって口をきいてやがる!!」
ハンジの物言いに怒りが頂点に達したその駐屯兵はハンジの胸ぐらを思い切り掴んだ。
「ハ!ハンジさん!」 「分隊長!!」
一瞬でその場が凍りつくが、ハンジは胸ぐらを掴まれたまま、涼しい顔だ。
「このまま死んでいった兵士達を無駄死ににする気か?」
「なんだと?!」
「死んでいった兵士達を無駄死ににしてもいいのかと聞いたんだ。我々は巨人に対して常に情報不足だ。それに広い壁外での捕獲は長距離索敵陣形を用いて移動するため困難。今、人類にとって最悪極まりない出来事が起きた事も、大勢の兵士が死んだのも承知の上だ。それでも巨人を捕まえてそのメカニズムを解明しなければ、我々は永遠にこの命を無駄に巨人の腹に収め続ける事になるんだ。少しは頭を使ってくれ。」
「……チクショウッ!!」
ハンジが毅然とした態度で今この人類に置かれた状況を説明すると、その駐屯兵は何も言い返す事ができなかったのだろう。掴んでいた胸ぐらを放した。
「分かってくれたかな?」
胸元をポンポンと払いながら淡々と身なりを整えるハンジ。
「あぁ…いったい俺らは何をすればいいんだ…」
「ご協力感謝するよ。そしたら…そうだな。まずは私とクレアで捕獲対象外の巨人を討伐してしまおう。」
するとハンジはクレアを呼ぶと、壁の周りで蠢いている巨人を指さし説明を始めた。