第47章 悪夢、再び
しかし、重症兵士の処置が終わり、次の処置に入ろうとした所で、周りがガヤガヤと騒がしくなっている事に気づいたクレア。
いったいどうしたのだろうか…
すると、ハンジとエルヴィンがクレアの元に走ってやってくる。
「クレア、処置の進行具合はどうだ?」
「だ、団長?それにハンジさんも…」
クレアは慌てて立ち上がると敬礼をし、処置の進行状況を伝えた。
「出血量の多い負傷兵は今処置が終わった所ですが、軽症の兵士はまだこれからです…」
「そうか、ミケが巨人の大群を感知した。」
「…え?!」
「その巨人の大群が真っ直ぐ北に向かっているそうなんだ。5年前と同じだ。壁が、破壊されたかもしれない。」
「そ、そんな……」
5年前……
まだあの時自分は15だった。
だが今でもハッキリと覚えている。
空一面が一瞬目が眩むほどの光に包まれた瞬間を…
そして、壁が破壊される爆発音の様な轟音を…
逃げ惑う人々の悲鳴を、負傷した人間のうめき声を…
そして何よりも、自分の家が、両親が、飛んできた壁の破片によって下敷きになっていた光景を…
走って、走って、走って…
自分の心臓の音が頭の中で鳴り響き口から出てきそうになるまで走った。
その後の記憶は途切れ途切れだが、覚えている記憶は今も色濃く頭の中に残っている。
あの時の惨状がまた起こっているかもしれない…
クレアの表情がみるみると青ざめていった。
「クレア?!大丈夫?!」
「え?は、はい!!申し訳ございません!!」
過去の記憶が蘇り一瞬青ざめたクレアだが、今はそんな事を考えてる時間などない。
姿勢を正し、謝罪をする。
「重症兵士の処置が終わっているなら今から急いでトロスト区へ帰還をする。本日の壁外調査は、緊急事態を想定して、ここで終了をする。」
「は、はい!」
エルヴィンは負傷兵の状況を確認すると、拠点の中心まで戻り、全兵士に号令をかけた。
「多数の巨人が北に向かっている。トロスト区の壁が破壊された事を想定し、我々は至急帰還をする。総員撤退!!!」