第47章 悪夢、再び
今度はハンジがクレアの上に馬乗りになっている。
「ハ…ハンジさん…」
しかしハンジは黙ったままサイドテーブルの眼鏡に手を伸ばすと、スッと顔にかけ、再びクレアを見下ろす。
その口元が少し上がってる様に見えたのは気のせいだろうか。
ドキドキと胸を高鳴らせながら固まっているクレアに、ハンジは構うことなく両手を顔の横にドンッとつけると、グッと顔を近づけてきた。
「クレア〜上官の自室に許可もなく忍び込むなんて感心しないなぁ〜」
「え…あ、あの…ごめんなさい…すぐに報告したくて…つ、つい…」
「そうか…それでもここは私の自室だぞ?」
「あ、あの…その…ご!ごめんなさい!!」
あまり怒ってるような表情には見えないが、怒らせてしまったのだろうか。クレアは若干“やってしまった感”を感じ、すぐに謝罪の言葉を述べた。
「別に咎めてはいない。でーもー!忍び込むからにはそれなりの覚悟があると…そう解釈しても…問題ないんだね?」
そしてハンジはニヤリと笑みをこぼしながらボサボサになった髪の毛をかき上げると、その手をクレアの顎に持っていき厭らしく撫でてみせた。
「キャッ!キャアア!」
いったいハンジはどうしたのだ?
なんか言ってる内容は怒っているのか怒ってないのかさっぱり分からない。
そしてこの胸の高鳴りはなんだ。
叱責に怯えて凍りついた様な鼓動ではない。
どちらかというとこれは…
なんだか熱を帯びた鼓動だ。
「ハンジさん……」
そうだ…
クレアはゴクリと唾を飲み込む。
そしてこの胸の高鳴りの正体に気づく。
否、気付いてしまった。
ハンジを、かっこいいと思ってしまったのだと……
薄い黄色いシャツは胸元まではだけていて、その隙間からは黒い下着がチラリと覗いている。
自分よりスラリと身長の高いハンジが、自分を押し倒しなんだか挑発的な台詞を投げかけた。
豊満な胸元、しかしスラリと高い身長、そして挑発的な台詞、髪をかきあげる仕草。
ハンジが女である事はもちろん知っているが、この中性的な魅力をハンジから感じてしまったクレアの胸は、ドキドキとうるさく拍動してしまったのだ。