第46章 巣立つ想いと、残る想い
「お?なんだよモブリット、君は私の説教以外に趣味や興味はないのかい?いやぁ〜寂しい奴だなぁ〜」
肩をすくめて両手を広げると、ハンジは実にわざとらしく残念がる。
「ぶ、分隊長…それはあんまりです…私にもそれくらい……」
「それなら私に向けていたエネルギーをそっちにも向けてやれ。趣味はあくまでプライベートな内容を含むからな。根掘り葉掘り聞きたい所だがここは逆セクハラだと言われる前に謹んでおこう。」
「散々クレアには根掘り葉掘り尋問をするクセに…なんか気持ち悪いですね…」
「アハ…ハハハ…痛い所を突かないでおくれよ。クレアは可愛いから仕方ないんだ。ほら、よく言うだろう!“男は可愛い子程いじめたくなる”って!!」
「なんだか前にもそんな事言ってましたが、あなたは一応女性です。」
「一応は余計だ!!」
ハンジは空になったグラスをドンッとテーブルに置くと、視線でおかわりを要求した。
ハイハイと言いながらトクトクと注いでいくモブリット。これで何杯目だろうか…残りもたいして残っていない。
アルコール度数の高いこの酒をよくもまぁ短時間で飲めるものだ。
「まぁ、話は戻すが、モブリットに柔軟性とやらがあるのなら、他にもちゃんと目を向けろ。そして向き合え。その方が人生に色が付く、豊かになる。そして、死ぬ時に悔いが残らない。」
少し真面目な視線でモブリットを見ると、モブリットもその言葉に答える様に見つめ返す。
「そうすれば、おのずと私への説教の時間も減り一石二鳥だ!!アハハハハ!!」
「もう…あなたって人は……」
「まぁ、悔いの残らない生き方をしろ…それが私の言いたかった事だ。」
すると、ハンジはソファの肘掛に脚を乗せて、開けっ放しのカーテンから覗く月を眺めながら静かに飲みだした。
他にも目を向けろ
ちゃんと向き合え
果たしてハンジがどこまで自分がここに来た事情に気づいているのか分からぬが、このセリフはモブリットの心を大きく揺さぶった。