第46章 巣立つ想いと、残る想い
「……??」
飲みにきた?こんな時間に?
何故……
ハンジはモブリットの事を疑うつもりなど微塵もなかったが、何か取り返しのつかない事になってしまったらと、一瞬自身の中の第六感が警告を鳴らした。
しかし、モブリットの表情は自分の不摂生に呆れながらも穏やかな表情だ。
こんな事を考える事自体が杞憂なのだろうか。
しかし、理由も告げずに断る事もできないし、今すぐに断れるもっともらしい理由も思い浮かばなかったため、ハンジは自身の心の内を悟られぬ様、モブリットを部屋の中に招き入れるしかなかった。
「ビックリさせないでくれ、いったいどういう風のふきまわしだい?」
「ちょうど手に入ったんです。私の奢りなので好きなだけどうぞ。」
トンッと応接セットのテーブルに置かれた瓶は間違いなくハンジの好きな銘柄の酒だった。
値段も決して安くはない。
その酒をモブリットは惜しむことなくハンジのグラスになみなみと注いだ。
「また大分散らかりましたね…いつも優しいクレアでも、そろそろ怒るんじゃないですか?」
「なんだよ…こっちの方が取りたい時にすぐ欲しい物が取れるから便利且快適なんだよ〜その辺クレアもモブリットも同じ班のくせに理解ないんだよなぁ…」
若干警戒をした様に見えたハンジだったが、好きな酒が一口身体に入ると、その心地良いアルコールの味に酔いしれ、気づけばいつも通りに戻っていた。
「それは分隊長だけの特殊な感覚です。いい加減1人で片付けと、掃除くらいできるようになって下さいよ…」
「アハハハ、なんか本気でクレア、私の嫁になってくれないかなぁ?いつも魔法の様にちゃちゃっと片付けてくれちゃうからついね…」
「クレアにはリヴァイ兵長がいらっしゃいます。以前もそんな話したでしょう…」
モブリットは軽くため息をつくと、自分のグラスにも注いだ酒を一口煽った。