第7章 調査兵団とハンジ班と時々リヴァイ
「兵長、このことを私に教えるために、時間を使ってくださったんですか?」
「だったらなんだってんだ。」
クレアの顔が、パァっと光を放つように笑顔になった。
「あ、ありがとうございます!!!!!私、嬉しいです!!!」
クレアは必死に必要な情報を紙にまとめていった。
リヴァイは、顔には出さなかったが、まんざらでもなく満足げだった。
そう、欲しかったのはこの笑顔だ。
心から喜ぶクレアの笑顔だ。
馬手帳の情報は偶然の思いつきだったが、今のクレアにはスランプを乗り越えるために必要なものであった。
リヴァイの作戦は見事成功だ。
「そうか…そりゃよかったな…」
向かいに座っていたリヴァイが、ふと立ち上がろうとした瞬間、突然勢いよく身を乗り出したクレアに、思いきりクラバットをつかまれ、フラついてしまった。
「……っ!!何しやがる?この奇行種…」
「ま、待って下さい兵長!!まだ行かないでください!ここは一般兵は立入禁止ですよね?まだ、まだ書きとめておきたいことが沢山あります!」
行儀悪くも片膝をテーブルにあげて、身を乗り出しているクレアは、右手でリヴァイのクラバット、左手は肩のベルトをしっかりつかんでいる。
まだ出ていかないでと懇願するように、蒼い瞳は揺れていた。
つかまれたクラバットのせいで前屈みになってしまい、リヴァイとクレアはテーブルを挟んで、至近距離で見つめ合ってしまった。
「おい、まだここにいていいから少し落ち着け!すぐ戻る。…………上官相手につかみかかるとは、さすがはクソメガネのとこの奇行種だな。これはヤツにしこまれた芸当か?」
一瞬、何を言われているのか分からないと言いたげな表情のクレアであったが、時間がたつにつれ、自分のしている行いに、みるみると顔が赤くなっていった。
「きゃーー!すっ、すっ、すみません!!私、なんてことを…」
パッと手を離すと着席し直し縮こまってしまった。
「すぐに戻るから、自由に書きとめてろ…」
一旦リヴァイは資料室から出て行った。