第45章 プレゼントは奇行種
「そうか…それなら今夜は兵舎には帰らない。」
「ど、どういう事ですか…?」
「クレアと2人だけで過ごせる時間が欲しい。今の俺が望んでるモノは…それだけだ。」
「兵長……」
ー2人だけで過ごせる時間ー
それは、調査兵である2人にとっては当たり前のモノでも、無限に存在するモノでもない。
とても貴重で、なかなか手に入らないモノなのだ。
リヴァイは真っ直ぐとクレアを見つめて返事を待つ。
「あ、で、でも…どうすれば宜しいのでしょうか…兵舎に帰らないなんて…」
「まずは俺の望みに応える気があるのかないのか教えてくれ…」
真っ直ぐと真剣な眼差しで自身を見つめるリヴァイに、クレアの心臓はドキドキと慌てふためいてしまう。
でも、答えなど考えずとも1つだ。
自分が差し出せるものをリヴァイが望んでるのなら、迷いなどない。
「私との時間…目にも見えず形あるモノでもございません…でも、兵長が望んで下さるのなら…取るに足らないモノですが、私は喜んで差し上げたいと思っております。」
「…目に見えなくても、形あるモノでなくても、俺は…それが欲しい…」
リヴァイは繋いでいた手を一旦離すと、その場でクレアを抱きしめた。
「兵長……?」
人気のない通りだが、道のど真ん中だ。
人目もはばからずに触れてくるリヴァイはとても珍しい。クレアはそんなリヴァイの行動に嬉しくなり自然と自身の腕を背中にまわして抱き返した。
お互いの熱を分け合うかの様に抱き合っていると、クレアのかぶっていた帽子の上に雪が積もってしまっているのにリヴァイは気づく。
「悪い……」
リヴァイは抱きしめていた腕を緩めると、帽子に積もった雪を払ってやった。
「あ、ありがとうございます。私は…大丈夫です…」
「今夜はこの辺の宿屋に泊まる。まぁ、特にイベントのある時期ではないし、どこでも空いてるだろう。」
「わ、わかりました!」
すると、リヴァイは再びクレアの手を取りポケットに入れると、宿屋を探すため歩き出した。