第45章 プレゼントは奇行種
「この鈍感奇行種が……」
「え?なんですかいきなり?」
しばらく店の外で空を見上げていたからか、クレアの手もリヴァイの手も指先まで冷たくなっていた。
だが、繋がれてポケットに突っ込まれた手は、コートの生地に包まれて段々とポカポカとしてくる。
「…あ、あの……?」
「お前は…こっちの方がいいとは思わないのか…?」
「え?!」
そう呟くとフイッと右側を向いてしまったリヴァイ。
もしかしなくても、照れているのだろうか。
クレアはそっぽを向いてしまったリヴァイの表情を見てみたくもなったが、その顔が見えなくても繋がれた手の熱がそれを教えてくれた。
ポケットの中で指と指を交差させる様に繋がれた手はお互いの熱がこもり十分に温かかった。
「兵長……」
手を取ってくれたリヴァイの気持ちが理解できると自然と胸の奥も熱くなる。
「ごめんなさい…私も…こっちの方がいいです。」
すると、リヴァイは何も言わないかわりに、繋いだ手をギュっと握り直して答えた。
しばらく2人とも黙って雪の中を歩いていたが、クレアが少し気不味そうに口を開く。
「あ、あの…兵長…?」
「…なんだ?」
「え、えっとですね……その…すみません……」
「ん…?何に対しての謝罪だ?」
「皆さんでお祝いはできましたが、私は…兵長に…何も用意できませんでした…なので…その…差し上げる物が何もなくて、本当にごめんなさい……」
「…そんなことか」
するとリヴァイは歩く足を止めると、クレアの方に顔を向ける。
「……兵長?」
リヴァイが歩みを止めれば、自然とクレアの歩みも止まる。
「もし、俺が望むモノをお前が今持っていたとしたら…クレアはそれを俺にくれるか?」
「そ、それは…もちろんですが…」
勿論リヴァイのためならなんでも差し出す事ができるが、今クレアが持っている物は、小さなショルダーバックに入っているハンカチや財布、それと客から投げられたおひねりの小銭くらいだ。
リヴァイは冗談を言っている様には見えない。
いったいこの自分は、リヴァイに何を差し出す事ができると言うのだろうか。
クレアは真剣な顔でリヴァイを見つめ返した。