第45章 プレゼントは奇行種
「あっ…!兵長!!」
「……!?」
店を出ると、空からはヒラヒラと無数の白い結晶が舞い降りていた。
初雪だ。
真っ暗な夜空から舞い降りる白い雪は、楽隊が奏でていた賑やかな音楽とは真逆に、ひっそりと静かに…そしてシンシンと積もっていく。
辺りを見渡せば道の端の方は薄っすらと白く積雪していた。
今年の雪は、ハンジが仮説を立てた“カマキリ予報”が的中するならそこまで積もる事はないだろう。
雪が積もらなければ通常通りの訓練ができるため、雪は降らないに越したことはないのだが、真っ暗な夜空から舞い降りる雪の結晶はなんとも神秘的で美しい。
愛しい恋人の誕生日にこんな美しい光景を見てしまうと、クレアは雪が少ないかもしれない今年の冬が、少し寂しくも感じてしまうというなんとも複雑な気分になった。
店の扉の前で少しの間空を見上げていた2人。
「ほら、もう行くぞ…」
「は、はい!!」
リヴァイが声をかけると、クレアはポケットから手袋を出していそいそと手にはめようとした。
兵舎まではそこまで歩かずに戻れるが、夕方からどんどんと気温も下がっていたため、凍てつく様に寒い。
「はぁ……」
しかし、盛大にため息をついたリヴァイによって、その手袋は取り上げられてしまった。
「えぇ?兵長?どうしたんですか?返してくださいよ…」
「なんでだよ…」
「な、なんでって言われましても…寒いものは寒いです…」
正当な理由を言ったものの、リヴァイはツカツカと先に歩いて行ってしまう。
「あっ、兵長…待って下さい…」
どうしたのか分からないが、追いかけない訳にはいかない。
クレアは小走りでリヴァイの後を追いかける。
すると、それに気づいたリヴァイは、すぐ側までかけてきたクレアの右手を取ると、その繋いだ手を自身のコートのポケットの中に突っ込んだ。
「へ、へいちょう…?」
思っても見なかったリヴァイの行動に、クレアは驚き、変な声を上げてしまった。