第44章 その奇行種、舞姫
「それにしても凄いおひねり!!楽隊とわけてもこんなに残ったの?やっぱりクレアは凄いよ!!私の自慢の部下だ!!」
「そ、そんな…ハンジさん褒めすぎです…」
ハンジは、少し照れくさそうにしているクレアを誇らしく見つめながらも、手はちゃっかりとおひねりを開封し金額を数えていた。
「おいクソメガネ…何してやがる!」
それにいち早く気づいたリヴァイは眉間にシワを寄せて睨んで見せる。
「え?アハ!!アハハハ!ちょっと欲しい実験道具があってさー…ソレ、ちょっとお高いのよ…コレで買えるか数えてみちゃったり…したんだけど……まずかった?」
「あったりめーだろ。これはクレアが受け取ったモンだ。お前が手を出していい金ではない。」
「あ、あの兵長…私は別に…」
「クレア、お前はハンジを甘やかし過ぎた…たまには厳しくしねーと、本当に怠慢クソメガネに成り下がるぞ。」
クレアは特に欲しい物も、買いたい物も無かったため、この金を誰がどうしようと構わなかったのだが、リヴァイによってそれは制止されてしまった。
「やっぱり駄目かぁ…」
「当たり前だろ。欲しい実験道具があるなら、酒と本を我慢するか、エルヴィンに頼むかどっちかだな。」
「ハンジ、酒と本はしばらく我慢してくれ…」
一連の会話を聞いていたエルヴィンは、リヴァイの提案を聞くと間髪入れずに突っ込んだ。
「え〜?エルヴィンまで?!もぅ…みんなして優しくなーい…」
ハンジはその場でガックシとうなだれてしまった。
「ハンジさん…元気出して下さい…」
クレアは苦笑いをしながら励ます様にハンジの背中をポンポンと叩いてやった。
激しいダンスで少し汗をかいたためか、または集中して身体を動かしたためか、クレアの身体からは少し酒が抜けている様だった。
今は1人で踊り回っていた時の様な無自覚鈍感奇行種の姿は見られず、リヴァイもホッと安堵していたのだが…
ホッと安堵したのは束の間、不覚にも先程クレアがチラリと自身を見上げながら笑いかけたあのサディスティックな表情が頭から離れず、リヴァイの下半身は沸々と熱を燻らせてしまっていた。
まずい……
これは非常にまずい……