第44章 その奇行種、舞姫
そしてリヴァイはいきなり始まった激しいダンスに早くも目を回していた。
ワルツとは違い強弱をはっきりとつけたキレのある振りに、速い回転のターン、それに突き放されては引き戻されるの繰り返し。
しかも、男女逆の組み方をしているため、リヴァイは完全にクレアに手綱を握られている状態だ。
否、馬で例えるなら馬銜(ハミ)を咥えさせられてる言っても過言ではない。
そんな状態で客からは笑い混じりの歓声が上がり、リヴァイにとっては非常に不愉快極まりなかった。
しかし、クレアと目を合えば、その交わる視線には色っぽくも熱がこもっており、ダンスの曲調に合わせてその熱も、ドンドンと上昇していく。
これだけの観衆の中、そんな目でじっと自分だけを見つめられるのは悪い気分ではなかった。
結局リヴァイは今回も奇行種クレアにしてやられてしまった様だ。
これでいったいクレアの奇行に振り回されるのは何回目だ…
でも、自分を振り回してくれる相手はこんなにも愛しいクレアなのだ。
こんな目で見つめられてしまえば抗う術などありはしない。
リヴァイは潔く諦め振り回される事にしたが、心の中で静かに呟く。
「(後で覚えておけよ…奇行種…)」
と。
「すげー!!最高だったぜー!!」
「持ってけ持ってけー!!」
「嬢ちゃん天才だー!!」
曲が終わると客達はクレアに向けてこぞって“おひねり”を投げ出した。
「わっ、わっ、何ですかコレは…!」
「何だって…見りゃ分かるだろ?おひねりだ。拾ってけ。」
「えぇ?コレ…全部ですか?」
白い紙ナプキンに包まれた小銭のおひねりは次から次に投げられ、クレアの足元は足の踏み場もないほどのおひねりで溢れかえっていた。
あまりにも量が多かったため、リヴァイとクレアによって拾い集められたおひねりは、楽隊のメンバーへお裾分けとして幾分かを渡した。
そして、2人がテーブルに戻った後、臨時のチップに気を良くした楽隊はアンコールにと一曲サービスをしてから帰っていったのだった。