第44章 その奇行種、舞姫
「………ん?!」
ワルツが終わり、2人は戻ってくるもんだと思っていたハンジだったが、すぐに別の曲が始まった。
今のワルツとは打って変わって正反対な曲調だ。
「ねぇ、エルヴィン。リヴァイってパソドブレなんて踊れたの?」
ハンジは特に音楽に興味はなかったが、聴いたことくらいはあった。
「いや……リヴァイが踊れるのは付け焼き刃で習得した基礎的なワルツだけだ。パソドブレなど踊れない…というか聴いたこともないんじゃないか?」
「はぁ?じゃあどうするのさ?!」
座席に残っていたエルヴィンとミケとハンジもまさかの展開に目が離せなくなったのだが……
なんだかおかしい事に気づく。
「ねぇ、なんかおかしくない??」
「あ、あぁ…」
「あ、あの…分隊長…団長…ミケさん…なんか、あの2人の組み方、男女逆じゃないですか?」
「あー!確かに!!」
モブリットがその異変に気づくとさらに3人は食い入る様に注目をした。
モブリットの言った通り、2人は男女逆の組み方をして、クレアがリードする様に踊っていたのだ。
そして、クレアは男役の様に勇ましくリードを取りながら踊りつつも、時折スカートの裾をなびかせたり足を高く蹴り上げたりと、女性の振りも入れながら1人二役を演じて見せたのだ。
リヴァイはただ戸惑いながらクレアのリードに合わせ、ターンをし、時には放り出されるように回転させられ、振り回されっぱなしだった。
その姿にハンジは腹をかかえて笑い出した。
「アハ!アハハハ!!何あれ!!リヴァイ完全にクレアに振り回されてんじゃん!!ウケるーー!!」
もうテーブルにドンドンと拳を振り下ろして爆笑状態だ。
それを見ていた客達も盛大に笑い出した。
「おーい!兄ちゃん!情けねぇぞ!!」
「こりゃ将来はかかぁ殿下決定だな?!」
みなハンジの様に言いたい放題だった。