第44章 その奇行種、舞姫
ーガタンッー
「その手を取るのを許されるのは俺だけだ。エルヴィンもクソメガネも引っ込んでろ…!!」
そう言い放つとリヴァイは重い腰を上げ上げてクレアの手をスッと取った。
「(ヒッヒッ!ひ〜かかった〜!)」
その反応にエルヴィンとハンジは顔を合わせてお互いに小さくガッツポーズをして見せる。
どうやらこうなる事を想定しての演技だった様だ。
「兵長!!!私、嬉しいです!!」
パアッと光を取り戻したクレアの笑顔は、今度はリヴァイだけを見つめだした。
こんな大衆の前で踊らされるなど死ぬ気で嫌だったリヴァイだが、自分がクレアのパートナーとして躍る事でこの笑顔も視線も他の男達に向けられる事がなくなるなら致し方ない。
リヴァイはエルヴィンに付き沿って夜会に出向いていた経験もある。
そのため付け焼き刃で習得したモノだが、基礎的なワルツくらいなら踊れた。
それに楽隊だってクレアとも自身とも初対面。どれだけダンスの技量があるかなんて分からないのだ。
流れる曲はおそらく基本のワルツだろう。
「…やっぱりな。」
すると、リヴァイの読み通り、流れ始めたのはワルツだった。
1歩目は左足
踵から
クレアの背をしっかりとホールドし
ターンをして滑らせるように足を前へ
格式高く優雅にとまではいかないが、それなりに様になってリヴァイが踊り出した為、調査兵団の面子も客達もそれぞれに感心し、声援を送った。
「仏頂面の兄ちゃんもやるじゃねーかよー!!」
「嬢ちゃんの彼氏かー!??」
「もっと笑わねぇと嬢ちゃんに失礼だぞー!」
私服を着ているためか、はたまた酔いが回ってるせいか、客の中では目の前で踊っているのが人類最強のリヴァイ兵士長だと気付く者は誰一人としていなかった。
「へぇー、リヴァイもやるじゃないか!!」
「まぁ、夜会に付き合わせていた時期もあったからな。これ位は踊れるさ。」
ハンジもミケもモブリットも、リヴァイのスマートなリードに口を揃えて感心をした。