第44章 その奇行種、舞姫
「兵長?!兵長ー!こっちに来て下さい!一緒に踊りましょ?!」
「はぁ?!」
まさかの展開に一同盛大に酒を吹き出し驚いた。
どうやら楽士はクレアにダンスのパートナーを連れてこいと言った様だ。
その言葉にクレアは迷いなくリヴァイの元へかけよったが、仏頂面で不機嫌そうにしているリヴァイは眉間のシワをさらに深くさせながらキッパリと断ってしまう。
「そんな事できるか!?」
「そんな事仰らずに!ホラ!ほら!」
ハッキリと断るリヴァイに負けじとグイグイ腕を引っ張るクレア。
もう完全に奇行種モードに入ってしまっている。
こうなるとどうにもならないのは過去の出来事で十分すぎる程経験済みだ。
だからといってこんな酔っ払いばかりの大衆の前で踊るなんて出来やしない。
そもそもリヴァイは、クレアが周りの男達に無邪気に笑顔を振りまく姿に既に嫉妬で腹の中は煮えくり返っていたのだ。
正直もうコレ以上愛想を振りまくのは許したくなかった。
しかし、なかなか首を縦に振らないリヴァイに少し困った顔をしてると、思わぬ伏兵が現れた。
「クレア…リヴァイが嫌だと言うなら仕方ない。私がお相手つかまつろう。」
そう言ってクレアの前に跪いたエルヴィン。
すると、伏兵第2も負けじと立候補する。
「クレア!あんな仏頂面はやめときな!私、ハンジ・ゾエが相手になるよ。」
2人とも胸に手を当てクレアの前に跪き、右手を差し出している。
「団長…ハンジさん…」
「おぉ!!今度は嬢ちゃんのパートナーめぐって大乱闘でも起きるのか?!」
「ハハハッ!!嬢ちゃんも隅に置けないなぁ!!」
「いったい誰を選ぶんだー?!」
クレアが誰を選ぶのか……
客達の視線が一気にクレア達に集中した。
そしてガヤガヤと外野はおもしろおかしくはやし立てる。
クレアはリヴァイと踊りたかったが、キッパリと断られてしまって動く様子もない。
少し悲しかったが、嫌なら仕方がないと諦めて、シュンとしながらクレアは目の前に差し出された手のどちらを取ろうか迷いだした時だった……