第44章 その奇行種、舞姫
きっかけなんてなんでもいい…
ただ笑って欲しかった……
突然真剣な表情で語ったハンジのその言葉に、一同何も返すことができなかった。
クレアの笑顔が見られなくなった事はリヴァイもエルヴィンもモブリットもミケも気づいてた事だ。
それに兵舎内で見かけてもいつも1人。
そんな姿に心配をしていたのは皆同じだったのだ。
ハンジはそんなクレアを何とかしてやりたくて、今回の飲み会を提案し荒療治だが笑顔を取り戻すキッカケを作った。
「はぁ…それにしても君のやり方はいつも荒療治すぎて、見ているこっちがヒヤヒヤさせられる。」
エルヴィンが苦笑いをしながらやれやれとため息をついてしまう。
すると、ちょうど店員が追加注文の酒を持ってきてハンジに手渡した。
「荒療治でもなんでもいい!!エルヴィン達も見なよ。あのクレアの顔。あんな笑顔見るの、久しぶりじゃない?」
「「「「…………」」」」
ハンジの言う事ももっともだった。
今クレアは酒に酔った状態だが、眩しい程の笑顔で心から楽しそうに踊っている。
そしてそれだけではなく、その眩しい笑顔に周りの客達もつられるように笑い、歓声を上げている。
やはり、クレアは笑っていてこそクレアだ。
昔の感情の無い気鬱なクレアよりも、眩しく笑っているクレアの方が何倍も、何十倍も魅力的だ。
そしてその眩しい笑顔は、周りの人間を不思議な程惹きつけるのだ。
それは他の誰よりも、ハンジ達が1番よく知っている。
「おーーーーい!!!クレア〜!いいぞ〜!もっとやれやれ〜!!」
すると、ハンジも場を盛り上げるように、酒の入ったジョッキ片手に高々と歓声を上げた。
「踊れ踊れ〜!!」
「嬢ちゃん最高だ!!」
「お〜い!こっちにも来てくれよ〜!」
周りの客もクレアに歓声を飛ばし盛り上げる。
そして一通り客席をまわり終えると、楽隊の1人がクレアにコッソリと耳打ちをする。
すると、クレアはニコニコと笑いながらハンジ達の座っているテーブルに向かってきた。