第44章 その奇行種、舞姫
それは、クレアがグラスに口を付けるたびに僅かな量を…
巧みに…
密やかに…
でも大胆に…
味もたいして変わらないため、クレアもリヴァイも、周りの人間も気づく事なくあっという間に酔っ払ったクレアが完成してしまった。
「(このクソメガネ……)」
だが、ハンジはクレアを酔わせてどうするのだ。
何かを企むにしてもただの酒場で酔わせて何になる。
リヴァイが疑問に思いあれこれ考えをめぐらせていると、楽隊の奏でる曲調は賑やかにアップテンポし、その軽快な旋律に店内はさらに盛り上がる。
すると、まさかの事態が起こった。
「なんて素敵なの!!」
酔って上機嫌になったクレアが楽隊の音楽に歓声を上げると、いきなり立ち上がり彼らの方までかけていってしまった。
「おいクレア!!」
何を考えてるんだと止めに入ろうとしたが、斜め向かいに座っていたハンジに手を掴まれ制止されてしまう。
「なんだよ、離せよハンジ!!」
「やーだよ〜。ま、見てなって!!」
「なんだと?!」
してやったりな顔でペロッと舌を出しウインクするハンジ。
「どういう事なんだハンジ?」
「大丈夫大丈夫!!」
しかし、エルヴィンもミケもモブリットだっていったいどうしたんだとクレアの行く先を心配そうに見つめている。
しかしハンジは“まぁまぁ見てな”と男達4人を落ち着かせると、自身もクレアの姿を目で追った。
すると…
「ソレ、かして下さい!!」
「コレかい?!喜んで!!蒼い瞳のお嬢さん!」
クレアは演奏中の楽士の1人に声をかけると、それに気付いた楽士は指さされた物を笑顔で放り投げてやった。
それは放物線を描いてクレアの方に向かって飛んでいく。
ーシャランッ!ー
クレアが受け取ったもの、それはキレイなレースリボンのついたタンバリンだった。
「お、なんだなんだ?!」
「嬢ちゃんが乱入か?」
「いいぞ!いいぞ!やれやれー!!」
タンバリンを受け取って突然乱入したクレアに客は注目し歓声を上げた。