第44章 その奇行種、舞姫
「すごい!どれも美味しいですね!」
見た目も盛り付けも大雑把で、食器も縁がかけていたりと、決して御洒落なレストランの様な雰囲気ではない。
だが店内はとても清潔に掃除されており、リヴァイを含む幹部組が気に入り、街の老若男女からも人気の理由がよく分かる。
この所はリヴァイと出かけることもなかった為、クレアは久々の外食だった。
心躍らせたクレアは運ばれてくる料理に目を輝かせながら次々に頬張っていく。
「ほらクレア。こっちのも美味いから食べなさい。」
「クレア、こっちのも食ってみろ。兵舎の食堂ではなかなか食えないぞ。」
「わっ、わっ、ありがとうございます!!」
エルヴィンやミケは美味しそうに頬張るクレアを見て心を擽られたのか、アレコレと餌付けをする様に料理を取り分けてやった。
「おい、コイツは犬っころじゃねぇんだ。食いたいモンくらい自分で取る。」
エルヴィン達から料理を勧められて喜んでいる姿に妬いたのか、すかさずリヴァイは牽制をして見せた。
「リヴァ〜イ…心が狭いなぁ!心の狭い男は捨てられちゃうよ〜!」
ハンジは酒の入ったグラス片手に早くもいい感じに酔いがまわっている。
「うるせぇよクソメガネ!!」
「分隊長!明日休みだからとはいって調子に乗りすぎないで下さいよ!」
「分かってる分かってるって!モブリットは厳しいなぁ!」
「あ、あの兵長…そんなに怒らないで下さい。このチーズのオードブル、とっても美味しいですよ。兵長もどうぞ。」
そう言って笑顔でリヴァイの皿に盛り付けるクレアの頬は少し赤かった。
まだそんなに飲んでいないはずだが…
酔ってはいないか少し心配したが、自身に向けられた笑顔は久しぶりに見る可愛らしいクレアだった。
この飲み会は自分の誕生日パーティーという名目だったが、リヴァイはクレアの笑顔を取り戻してやりたいという目的もあった為、まずはこの笑顔に安堵をする。
そして、リヴァイ自身もこの賑やかな雰囲気に自然と酒が進んだことは言うまでもなかった。