第44章 その奇行種、舞姫
「さ、飲もう飲もう!乾杯、乾杯!!」
それぞれに酒が運ばれてくると、早くもハンジが身を乗り出して乾杯の音頭をとろうとしている。
エルヴィンにミケ、モブリットとハンジはいつも注文しているアルコール度数の高い酒を注文していたが、リヴァイだけはクレアに付き合ってほとんどアルコールの入っていないシャンパンを頼んでいた。
「あの…別に兵長もいつも頼まれているお酒で良かったんですよ?何も私に付き合わなくても……」
「あ?別にいい…俺がお前と同じ物を飲みたかっただけだから気にするな。」
「す…すみません……」
そう言いながらリヴァイは自分とクレアのグラスに瓶を傾け注いでいった。
もちろん同じ物を飲みたかったのは嘘ではない。
だが、一緒の酒にしておけばクレアが1人で1瓶空けることはない。
アルコール度数が低いとはいえ、酒は酒だ。
奇行種クレアがこんな大衆居酒屋で奇行種に豹変したら大変な事になる。
いや、大惨事になりかねない。
そのため同じ酒を注文して、瓶に残った酒もドサクサに紛れてほとんどリヴァイ自身で飲んでしまうという算段だったのだ。
「あ、リヴァイ達も注いだね!ゴホン!では本日も調査兵団第4分隊分隊長、このハンジ・ゾエが乾杯の音頭をとらせて頂きます!」
大きなジョッキを持って片手を腰にあてると、ハンジはエヘンと胸をはった。
「牛乳飲んで背伸ばせよリヴァイ!!誕生日おめでとう!カンパーイ!!」
ーカシャーンー
「ったく、毎回毎回フザケた事言いやがって!!」
「ハ…ハンジさん!!」
「アハハハ!!飲もう飲もう!!」
どうやらこの乾杯の音頭は毎度の事のようだった。
クレアはハンジのテンションにハラハラとさせられたが、リヴァイの誕生日を祝うパーティーは無事に開催された。
そして次々に運ばれてくるのは大雑把に盛り付けられたツマミの類だったが、どれを口にしても美味しかった。