第44章 その奇行種、舞姫
グルリと周りを見渡すと、若者から年配までの幅広い年齢層のお客達が楽しそうに飲んでは騒いでいる。
初めて来た店だが雰囲気だけで、クレアはワクワクとしてきた。
こんな気分になったのは本当に久しぶりだった。
「さっ!クレアはこっちこっち♡」
コートを脱いで店の端にあるハンガーラックにかけると、ハンジがクレアを手招きして自身の横をポンポンと叩く。
「は、はい!」
急いで駆け寄ると、眉間にシワを寄せたリヴァイがクレアの手首を掴んだ。
どうやらクレアの座る場所がハンジの隣では納得がいかないようだ。
「ちょっとリヴァイ!その手を離して、クレアは私の隣だよ。」
フンッと鼻をならしながら主張をするハンジ。
「うるせぇなクソメガネ。クレアは俺の隣だろ…」
鋭い睨みをきかせて譲らぬリヴァイ。
クレアの座る場所をめぐり場の空気が一気に戦闘モードとなる。
「なんだよ…やる気か?」
「そっちがその気なら望む所だリヴァイ!」
いつぞやのテキーラデスマッチを思い出させる台詞にクレアはタジタジだったが、運良くエルヴィンとミケが助け船を出してくれた。
「まぁ、今日はハンジがこの席を設けてくれたんだ。座席配置くらいいいだろ?」
「それに愛しい恋人が目の前にいる方が隣に座るよりよく見える、一石二鳥だ。」
そう言って、エルヴィンとミケがリヴァイの両脇に立つと有無を言わさずかけてしまった。
「ったくどうして俺は自分の誕生日にこんなデカくてムサイ男を隣に座らせなきゃなんねぇんだよ…」
盛大に舌打ちをしながらリヴァイも席についたが、確かにミケの言う通り、目の前に座ってくれればその姿は嫌でも目に入る。
今日のクレアは久しぶりに見る私服姿だ。
ベルベット生地で仕立てられたチャコールグレーのワンピースで胸元には黒いサテンのベルトリボン。
スカートの下には黒のレースパニエを履いており歩くたびにヒラヒラと揺れて見えるレース模様がクレアの可愛さをより引き立てていた。
そして髪の毛は両サイドを編み込み後ろは結わずにおろしている。
上品にも可愛らしくも見える絶妙な仕上がりに、リヴァイの気分は早くも高揚していた。