第44章 その奇行種、舞姫
「あっ!奇行種クレアがリヴァイに負けた!!アハハハ!!」
「分隊長…これはちょっとクレアがかわいそうですよ…その辺にしてやって下さい…」
気の毒に思ったモブリットは立ち上がりテーブルの向かいで額を打ち付けているクレアの肩を励ますように叩いてやった。
しかし……
「もう!!モブリットさん!!“ちょっと”じゃないです!!私、もっと沢山かわいそうです!!あぁぁぁぁん……」
八つ当たりの様にモブリットを怒鳴りつけたクレアは、再びテーブルの縁に額を打ち付けて泣き出した。
「クレア……」
せっかく庇ってやったと言うのにとばっちりを受けたモブリットの胸の中は複雑だ。
「気の毒だったなモブリット…禿げる前に異動願い出すなら出しとけよ。」
「リヴァイ兵長……」
そう言うと、リヴァイは食べ終わった食器を持って立ち上がる。
「ほら奇行種、さっさと食っちまえ。じゃねぇとエルヴィンの部屋に書類を持って行かせる仕事を押し付けるぞ。」
「た、た、食べますよ!すぐに!今すぐに!!」
すると、“エルヴィン”という言葉に反応したのか、クレアは一目散に残りの朝食をかきこみはじめた。
「ハッ、やればできるじゃねぇかよ。でも…吐くなよ…」
「そんな勿体無いことしません!!」
リヴァイはクレアが食べはじめたのを確認すると、悪い笑みをこぼして食堂を後にした。
「もう!ハンジさんもハンジさんだし、兵長も兵長です!!みんなしてヒドイです。」
「いやぁ、アレだよアレ!!可愛い子程ちょっかいだしたくなるんだよ。男って生き物はさ!」
「ハンジさんは女性です!!」
人差し指を立ててドヤ顔をするハンジにすかさずクレアの突っ込みが入った。
「アハハハ、確かにそうだったね!クレアが相手だと自分の性別が時々分からなくなっちゃうんだよな〜、ゴメンゴメン!!もうからかわないから機嫌直して!お願い!ね?クレア!」
「も…もう……仕方ないですね…」
「エヘヘ、可愛いなぁ、クレア。」
敬愛するハンジからテヘッと舌を出して謝られてしまえばもう何も言い返せない。
クレアは結局今回もハンジの悪ふざけを許してしまった。