第44章 その奇行種、舞姫
「お前は善がり狂ってたから気づかなかったんだろう?」
「兵長!!」
シレッと言ってのけるリヴァイに抗議の声を上げるが、ハンジが追い打ちをかける言葉を言い放つ。
「ちなみにエルヴィンもいたからね〜ハハハ!!」
「え……!?」
まさかの事実に背筋が凍る。
今朝のあの情事を知る人物が2人もいる…
まぁ…1人は仕方ないにしても、1人はこの兵団のトップだ。無理矢理とはいえ朝っぱらから執務室を私物化する様な行為を聞かれていたとは…
恥ずかしいを通り越して、卒倒寸前だ。
もう今後どんな顔してエルヴィンと顔を合わせればいいのだ。そして自分はいったい誰になんと怒(いか)ればいいのか分からず混乱状態だ。
「へ、兵長!!団長やハンジさんがいるのに気づいてながらどうしてやめてくれなかったんですか?!」
混乱状態の頭をなんとか捻ると、クレアはリヴァイに正当な主張をしてみせる。
「まぁ、エルヴィンにお前の声を聞かれたのは癪に障るが、反対にエルヴィンが来たからといってやめなきゃならないのも癪に障る。その結果があれだ。文句はねぇだろ。」
「あ、あ、あの………」
自分が悪いなど全く思ってないリヴァイは涼しい顔で朝食を食べている。
何を言っても無駄なようだ。
「もう私…団長に合わせる顔がありません……」
ガックシとうなだれるクレア。
「なんだよ。善がり狂ってて気づいてなかった事にすれば問題ないだろ。」
「問題大ありです!!それに兵長!もっと慎み深い言葉を使って下さいといつも申してるではありませんか?!」
「はぁ?!お前の“慎み深い”はかえって厭らしく聞こえるからお断りだ。」
「あぁぁぁぁぁぁぁ……」
何をいっても敵わないリヴァイにクレアはとうとう力尽きてゴンッとテーブルの縁に額を打ち付けてしまった。