第44章 その奇行種、舞姫
「……あ、あの………」
ハンジの言葉はヅクンと胸に刺さった。
罪悪感……
言われてみて初めて自覚をした。
そう、このなんとなく自身が笑う事を拒んでるモヤモヤとしている気持ちは、無意識のうちに芽生えた罪悪感だったのだ。
否定する様な言葉がすぐにでてこないあたり、ハンジの言ってることは正しいのだろう。
「前にも言ったじゃん、調査兵だからって幸せになっちゃいけない事なんてないんだよって。前はリヴァイとくっついた時に言ったんだったかな?別に今回の事だって一緒だよ。沢山の兵士が亡くなっても、だからと言って生き残った者が楽しく笑い、“生”を謳歌することを否定しなきゃいけない理由なんてどこにもないんだ。」
「ハンジさん…」
「だから少しずつでもいいから笑って…クレアは笑ってる顔が1番可愛いからね!!あっ、でもあんまり可愛い顔しちゃうとリヴァイが妬いちゃうかな?アハハハ!!」
ハンジはクレアの頭をグシャグシャと撫でながら笑う。
「そ、そうですね…ハンジさんの仰る通りです…」
クレアもハンジにつられる様に少しはにかんだ。
「でしょ?!ってなわけでどうしよっか?!リヴァイの誕生日。もし本当に何も考えてないなら幹部の皆で飲みに行かない?最近飲み会もやってなかったし、パーッとみんなで騒いで楽しもうよ!」
ハンジの提案にモブリットも頷いている。
2人きりで過ごす誕生日も大事だが、きっとリヴァイもハンジの様に自分がこの所笑わなくなった事に気づいてるかもしれない。
それなら皆でリヴァイの誕生日を祝い、楽しく過ごす姿を見せるのがいいかもしれないと、クレアは二つ返事で了承をした。
「素敵なご提案ありがとうございます!!今年は是非皆さんで兵長のお誕生日をお祝いしたいです。」
「よし!!じゃあ決まりだね!よーっしゃー!腕がなるねぇ!!」
「…??」
飲み会の店を予約するだけなのに、いったい何に腕がなるのか少し疑問に思ったが、きっと久しぶりの飲み会でテンションが上がってるのだろう。
クレアはペンを持ち直すと資料のまとめを再開させた。