第44章 その奇行種、舞姫
ハンジやペトラが声をかけてくれた時は一緒に食事などをしていたが、基本は1人だ。
そんな中、フレイア達の死にはもう心の整理はできていたのだが、なんとなくクレアは心から笑う事ができなくなっていた。
リヴァイと一緒に過ごせる朝の時間はとても幸せだ。ハンジ達との夜の仕事も楽しい。冗談を言い合えばもちろん面白い。
訓練も真剣に励むことができている。
体調も悪くない。
だが、なんとなく…心から楽しみ、心から笑うという事を遠ざけている様な自分がいる…クレアはそんな風に自覚をしていた。
そんな日々を過ごしていたらリヴァイの誕生日は刻一刻と近づいているのに何も良いアイデアが浮かばず、時間はただ悪戯に過ぎていくだけだった。
大好きなリヴァイのために何かしてあげたい。
でも中々うまく考える事ができなかった。
「はぁ…だと思ったぁ。」
ハンジは苦笑いをしながらクレアに付き出した拳をそのまま額にコツンとくっつけた。
「キャッ…ハ、ハンジさん…?」
小突かれた額を片手でさすりながら目をパチクリさせているクレアにハンジは続ける。
「クレア、この間の壁外調査が終わってからあんまり笑わなくなっちゃったからさ、私もモブリットも心配してたんだよ…」
「あ、す、すみません!!あの…まだフレイアの死を引きずってるとか、そ、そんなんじゃないんですけど…ただ……あの…」
「もう…分かってる……」
今度は人差し指で唇を塞がれてしまった。
「なんとなく…笑ったり、楽しんだりできないんでしょ?」
「あ…は、はい……」
図星をつれてしまいつい俯いてしまう。
「クレアの気持ちはちゃんと分かってるつもり。大切な人を沢山亡くしちゃったせいで、クレアはきっと、“自分だけが笑ったり楽しんだりしてはいけない”って罪悪感みたいなのが邪魔しちゃってるんだよ…」
「ハンジさん……」
「でも、そんな事…気にしなくていいんだよ。」
ハンジはニッコリと笑うとそっとクレアの頭を撫でた。