第44章 その奇行種、舞姫
満面の笑みで提案をしたハンジであったが、内心はクレアのメンタルが心配でしかたなかった。
前回の壁外調査で大切な親友フレイアを亡くしたクレア。
それだけではなく自身を慕ってくれていたリリアンにアンドレ、他多数の後輩兵士を一気に亡くしていたのだ。
ハンジにリヴァイにと、まわりの支えもあってなんとか正気を取り戻したクレア。
特別休暇の後もすぐに通常の訓練に復帰をし、体調を崩す事なく励んでいたがやはり、以前に比べると笑顔が減った様にハンジは思えてならなかった。
悩んでいる素振りや苦しそうな様子は見られないのだが、圧倒的に“真顔”でいる時間が増えたのだ。
今まで日中はフレイアとリリアンと一緒に過ごす時間が多かったせいか今は1人でいる時間が目立つ。
残念な事に102期も、103期も生き残っているのはクレアをいれて若干名だけだ。
もともと友達を作るのが苦手だったクレアは、ハンジといる時以外はほぼ1人で行動するしかなかった。
そんな様子に心配したペトラが時々声をかける姿が見られたが、それでもクレアが1人過ごす時間は多かった。
なるべくハンジも1人にさせない様に気を付けてはいたが、日中に会議が入る事もしばしばあったため、中々うまくいかない。
会議でハンジとモブリットが外せば、クレアはエルドの指揮で訓練に参加する。
当然だが、幹部会議の時はリヴァイにも会えないため、この所のクレアは1人ぼっちで過ごす事が多かった。
「……あの、実は…まだ何も決められてなくて、どうしようか悩んでました。」
少し気不味そうに紅茶を飲みながら告白するクレア。
クレアもクレアで色々と悩んでいた。
前回の壁外調査からクレアの生活環境はガラリと変わってしまい、戸惑う事ばかりだった。
まずは相方のいない部屋に慣れなくてはならない。
今まであたり前の様に一緒だったフレイアとリリアンとしてきた風呂や食事、それら全てを1人でやり過ごさなくてはならなくなったのだ。