第44章 その奇行種、舞姫
「そうなんだよなぁ…積雪少なければ壁外調査に出れるのに…でもまぁ、夜営をする壁外調査は初めての試みになるからね。会議では次々と色んな問題点がでてくるんだ。仕方ないけど、今年の冬は訓練と会議漬けになりそうだなぁ。」
心底残念そうに話すハンジ。
「あっ、でも積雪が少なければ訓練は通常通り行えますよね?!昨年はエンドレス雪掻きに、エンドレス曳(ひ)き馬で流石の私も身体が悲鳴を上げましたから…」
「アハハ!!まぁ、確かにね!!昨年の雪掻きは本当にキツかったねー!!」
昨年はまれに見る豪雪で、雪を掻いても掻いても降り注ぐ白い雪は、容赦なく調査兵団の敷地内に積もっていき、屈強な兵士達の体力と精神力をみるみる奪っていったのだ。
今思い出すだけでもあの日々は軽くトラウマだ。
それに比べれば壁外調査に出れなくても、通常の訓練ができるのならば断然そちらの方が良い。
「じゃあ、とりあえず今日の記録まとめちゃおうか。」
「「はい!!」」
3人はハンジの執務室に戻るため兵舎裏を後にした。
「ハンジさん、モブリットさん、お疲れ様です。」
ハンジの執務室に戻ってきた3人はさっそく資料のまとめにとりかかるが、その前に一息つきましょうとクレアは紅茶を淹れてきた。
「ありがとう!」「すまないクレア。」
冷え切った身体に温かい紅茶が心地良く染み込んでいく。
クレアの淹れる香り高い紅茶は至福の時だ。
しかし、クレアの淹れた紅茶を飲みながら資料をまとめていると、ハンジが何の突拍子もなくある話題を持ち出した。
「そういえばさー、クレア今年はリヴァイの誕生日プレゼント、どうするの?何か決めた?」
「え?!いきなりどうしたんですか?」
ほんとうに突拍子もない話題にクレアは突っ込まずにはいられなかった。
「もう決まってるならいいんだけど、もうあまり日にちもないでしょ?だけど、クレア休日もずっと兵舎にいるから…もし悩んでるなら力になるよ!っと思ってね!」
「ハンジさん……」
ハンジは親指を立てた拳をグッとクレアの前に突き出すと、満面の笑みでウインクして見せた。