第43章 姉妹の絆
「……お姉ちゃんらしいわ……」
マリアは目に涙を浮かべているが、その瞳にはしっかりと光がさしていた。
「…え?!」
思ってもみなかった言葉にクレアはもちろん、ミケもエルドも驚いた。
「お姉ちゃん…きっと自分が死ぬの、分かってたんだよ。クレアお姉ちゃんがエルドさんに会わせてあげたいって想いも多分本当に嬉しかったんだよ。だから…だからこそ、最後にその言葉しか出てこなかったんだと思う…」
「…マリア……」
「クレアお姉ちゃんには、せっかく頑張って延命処置をしてくれたのに力尽きてごめん…そして、エルドさんには最後にお別れを言うことも出来なくてごめん…そして分隊長のミケさんには、志半ばで死んでいくことにごめんなさい…と、全ての想いが込められた言葉だったんだと私は思います……」
「で、でも……私は……」
マリアはそう言うが、クレアはフレイアの死に顔を思い出すと、とてもそんな風に思っていたとは考えられなかった。
「ううん違うよクレアお姉ちゃん…きっとお姉ちゃんは自分が死ぬ事で、そうやってクレアお姉ちゃんが自身を責めてしまうだろう事にも謝っていたはず。私はそう思う。そう思うのがお姉ちゃんだから……」
「…………」
クレアは返す言葉が見つからなかった。
本当に、本当にそんな風に自分が許されるような解釈をしてもいいのだろうか…
クレアの心は戸惑い揺れる。
「昔からそうだよ…いっつも周りの事ばかり気にして、心配して、世話焼いて…ついでにお節介も焼いちゃって…そんなお姉ちゃんを見てきた私だから分かるんだよ。お姉ちゃんの最後に残した言葉の意味が。だからお願いです、誰も自分を責めないで下さい。」
目に涙を溜めながら必死に笑顔を作りマリアは深々と頭を下げた。
わずか10歳の少女だ。
両親を、そして唯一の姉をも失った幼い少女がとても言える言葉ではない。
でも、今の話は紛れもなくマリアとフレイアが血のつながった姉妹であるからこそ話せた事なのだろう。
その証拠にマリアの瞳に迷いは伺えなかった。