第43章 姉妹の絆
フレイアの最後の言葉。
それを直接に聞いていたのはミケとクレアだ。
クレアはあの時の事を思い出すと酷く胸が痛んだが、フレイアの処置をしたのは自分なのだ。
ここは逃げずに自分が言うべきだと、自身を奮い立たせるとクレアはマリアの目を見てゆっくり話を始めた。
「あのね、マリア…フレイアの処置にあたったのは私なの。だから最後の言葉は私が…聞いた…」
「クレアお姉ちゃんが聞いたの?お姉ちゃんは…なんて言ってたの?」
口にするだけで涙が込み上げるが、遺族であるマリアの方が何倍も、何十倍も辛いのだ。
クレアはグッと拳を握ってなんとか涙を引っ込めると、勇気を出してマリアに告げた。
「“もう……ごめん…”って言ってた。」
その言葉に少し驚いた表情のままかたまってしまったマリアにクレアは続ける。
「フレイアを助けられなくてごめんなさいマリア…謝って済む問題ではないけれど…本当にごめんなさい。私の所に来た時にはもう殆ど意識もなくて、私ができる事は、最後にエルドさんに会わせてあげようとなんとかわずかな時間、延命処置を施すことしか選択できなかった……」
再びあの時の悔しさがクレアの心を容赦なく攻撃するが、自分には伝える義務がある。ちゃんと最後まで伝えなくては…
「規定量以上の強心剤を投与して心肺蘇生を繰り返したけど、エルドさんが駆けつける前に、わずかに間に合わず息を引き取ってしまった…」
「…そう…なんだ…」
マリアの声に胸が痛むがまだ全てを伝えきれていない。
「私は…フレイアを誰よりも大切な親友だと思っていたのに…結局最後の願いさえ分からなかった。私は…大怪我で苦しんでいたフレイアに無理矢理延命処置を施して、余計に苦痛を与えていただけなのかもしれないの…」
そこまで言うとクレアは奥歯を噛み締めて俯いてしまったが、マリアから出た言葉はクレアの予想を遥かに越えるモノだった。