第43章 姉妹の絆
「今日はその知らせと遺品を渡したくて訪問させてもらったんだ。マリア…遺品は受けとるかい?それとも…兵団で処分を希望するか?」
中にはいつまでも辛い想いが残るからと、遺品の類を一切受け取りたがらない遺族もいる。
そのためミケはマリアにもその選択をしてもらわなければならなかった。
「……う、受け取ります…」
しばしの沈黙の後、重い口を開き、マリアが選んだ選択は“受け取る”だった。
すると、ミケは荷物から一着のジャケットを取り出すと、マリアに差し出す。
「これはフレイアが壁外調査で着ていたジャケットだ。拠点に埋葬する前にこれだけはと回収をしたんだ。あえて洗濯はしていない。これはフレイアが最後まで勇敢に戦った証だからな。そのまま持ってきた……」
「あ………」
マリアはそのジャケットをギュッと胸に抱いて顔を埋めると、大好きだった姉の香りと、壁外調査で勇敢に戦っただろう砂埃の香りが鼻を掠めた。
「あ、あの…マリア。私からはこれを…同じ部屋だったから私が遺品整理をさせてもらったの。下着とかは処分してしまったんだけど…キレイな服があったから…持ってきたわ…」
マリアは顔を上げてジャケットを一旦自身の横に置くと、クレアから渡された袋の中身を確認する。
「ありがとうございます…これは遺品として私が大切に保管しておきます。」
まだ完全に受け入れ切れていないのだろうか…
瞳を曇らせたままポツリと礼を言った。
無理もない。
845年の襲撃でマリアは両親を失いフレイアが唯一の身内だったのだ。
その唯一の身内までも巨人によって殺められたとなればその心情は計り知れない。
遺品を抱えたまま黙り込んでしまったマリア。
皆、何か声をかけてやりたかったが、慕っていた姉を亡くしてしまったマリアに、かけてやれる言葉など中々見つからなかった。
しかし、そんな中沈黙を破ったのはまさかのマリアだった。
「あ、あの……姉の最後の言葉を聞いた方はいらっしゃいますか?」
「……?!」
その質問にズキンとクレアの胸が痛んだ。