第7章 調査兵団とハンジ班と時々リヴァイ
──クレアが調査兵団に入団して、2ヶ月がたとうとしていた──
クレアは調査兵団に入団してから、見違えるように変わった。
訓練兵団では、訓練中は生き生きとしているものの、普段はいつも物憂げで、誰も寄せ付けないオーラが知らず知らずに出ていたが、調査兵団ではそんなのお構いなしに、皆グイグイ踏み込んでくる。
特にクレアは訓練兵団を首席で卒業したのだ。
実際の訓練でもずば抜けた才能を披露すれば、皆興味をもち寄ってくる。
最初こそ戸惑いをみせたが、クレアも、命を懸けあう調査兵団に入団したのだ。
少しずつ受け答えをしていくうちに、自然に他人と話をすることができるようになっていった。
特に男兵士は、小柄なクレアが少し照れくさそうに話す姿を見ては、男心をくすぐられるのか、よくいじられキャラにもされていた。
同室のフレイアの存在も大きかった。
朝は早くにリヴァイの執務室に行き、夜はハンジの手伝いに行ってしまうため、あまり長い時間すごすことはなかったが、一緒に食堂で食事をとったり、時間があれば訓練の事や今は亡き家族の話をすることもあった。
そして、1番は喜怒哀楽の感情を表にだせるようになってきたことだ。特にクレアはここ最近よく笑うようになった。
兵士達と話すときは照れくさそうにはにかみ、ハンジと話すときはキラキラと眩しくなるような心からの笑顔を出すようになっていた。
ハンジもそんなクレアが可愛くてしかたがない様子だ。
ただ、それを面白く感じていない人物が1人……
人類最強、リヴァイ兵士長だ。
今朝もクレアはリヴァイの執務室の掃除を甲斐甲斐しくしていた。
いつもと同じようだが変わったところが1つ。
リヴァイはクレアが掃除を終わらせる少し前に執務室に行くことを習慣にしていたのだ。
少しずつ会話をするうちに、入団当時の警戒心だらけの態度は、徐々になくなっていった。今では他の兵士達と同じように話ができているが、もちろんリヴァイはそんなのでは納得がいかない。
ハンジにはあんなに屈託のない笑顔を見せて話すのだ。リヴァイは自分が他の兵士達と同じ様に扱われている気がして、非情に不服であった。
しかし、リヴァイは今まで女の気を引こうとしたり、喜ばせようとしたことがない。