第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
「………ん……」
何度か触れるだけのキスをする。
その唇にはしっかりと熱がかよっており、お互いに生きているという事を実感できる。
「クレア……もっとだ……」
一旦唇が離れると、クレアは軽く上目遣いで自身を見つめるリヴァイと目が合ってしまった。
イスにかけたリヴァイに跨っていると、自然と目線はクレアの方が少しだけ高くなる。
いつもは自分がリヴァイを見上げて目を合わせることに慣れているせいか、このアングルはなかなかドキドキとさせられる。
しかし、その胸の鼓動が収まらぬまま再び唇を奪われしまい、クレアはギュッと目を閉じた。
リヴァイは手を後頭部にするりとまわすと、クレアの逃げ道を奪い、唇の隙間から舌を侵入させ深く深く絡ませる。
「……ふぅ…ん……ん……」
生きて再会できた……
それは、決して当たり前の事ではない。
そしてそれは、お互い痛い程に理解をしている。
理解をしているからそこ、触れ合わずにはいられない。
「…はぁ…あぁ…兵長…?これだけは…言わせてください…兵長は何もできなかったと仰っしゃいましたが、エルドさんはそうは思わなかった筈です。…だって、他でもない兵長がずっと側にいてくれたんです。黙って側にいてくれただけでもエルドさんは救われた筈です。その証拠に、エルドさんはもう前を向いていたではありませんか…」
唇が離れると、少し息を上げながらクレアはリヴァイの両肩に手を置いて素直な気持ちを語った。
「…クレア……」
「私も兵長のおかげで今前を向くことができています…本当に心から感謝しています。」
クレアはリヴァイの目元の傷に軽く唇をつけると、今度はクレアの方から唇を重ねた。
「兵長…私だって怖いです。でも今私は生きて兵長の目の前におります…どうか私にも、兵長と生きて再会できた事を…もっともっと実感させて下さい…」
いつも執務室では嫌がるくせに今日のクレアはそんな素振りを見せなかった。