第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
「…あっ……」
トンッとクレアが一歩リヴァイに近づいた。
「ハンジとシオンの花畑に行ったんだろ?花は満開だったか?」
クレアの両手を優しく握りながら問いかける。
「は、はい…本当に見事に満開で…とても素敵な花だったので、摘んで帰ってきました。」
「そうか…ちゃんと、見送ってやれたか?」
「は、はい……」
「ハンジからシオンの花言葉と色霊の話は聞いたんだろう?お前がちゃんと見送る気持ちになれたのなら、フレイアも安心して眠れるだろう。」
「兵長…」
「今回はハンジにいい所を持っていかれてしまったな…」
そう言うとリヴァイは自虐的な笑みをこぼした。
「兵長…そんな事は…」
確かにハンジにはフレイア達の“死”と向き合える場所に連れて行ってもらい花言葉や色霊といった、胸を打つような話も聞かせてもらった。
しかしリヴァイからだってクレアは十分に慰めを貰っていた。
「私はハンジさんだけではなく、兵長からも…たくさん慰めて頂きました…昨晩、兵長が私の想いを受け止めてくださらなかったら、おそらく今日もフレイアの死を引きずったままだったと思います…ハンジさんと一緒にフレイアの安らかな眠りを願えたのは、兵長のおかげです、ありがとうございました…」
クレアは戸惑いながらも笑顔で答える。
「そう言ってくれるのなら、俺も締め上げられた甲斐があったってことだな…」
「そ…その件に関しては…誠に申し訳ありませんでした…」
すると、リヴァイは微かにこぼしていた笑みを消し、再び真顔になると、ポツリポツリと言葉を選ぶかの様に話しを続けた。
「昨夜はお前が寝ちまった後、エルドの部屋に行ったんだ。何かをしてやれる訳ではなかったんだがな…」
「………」
「誰だって同じだろうが…俺はもう大事なモノは失いたくない…そのための選択もしてきたつもりだ。実際に3月の壁外調査で行方不明になったお前を助け出す事ができたのも、自身の選択を信じて動いた結果だ。だが、巨人の領域へ踏み込む壁外調査だ。昨夜お前にも言ったが…どんな選択も…結果は誰にも分からない…」
リヴァイは握っていたクレアの手にぎゅっと力を込めて握り直す。