第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
「………」
クレアが側まで来ると、リヴァイはイスを少し下げてクルリと回し、向かい合わせになった。
そして脚を組み直すと、イスの肘掛を使って頬杖をつき、なおも黙ってクレアを見つめている。
雰囲気から察するに、黙ってはいるが特に怒っているようには感じない。しかし、この無言は正直辛い。
「あの…兵長……」
「なんだ…」
「き、昨日は…本当にすみませんでした!!せっかく部屋まで来て頂いたのに、私…自暴自棄になってしまって…暴れてしまって…それに、兵長の目元の傷は、私がつけたもの…ですよね…本当に申し訳ありませんでした……」
「はぁ…それだけじゃねぇぞ…」
クレアは深々と頭を下げたが、リヴァイの答えにイヤな予感が脳内をめぐった。
「えと…?!」
「お前は抱きしめようとした俺の胸ぐらを掴んで、馬鹿みてぇな力で押し倒した挙げ句に、思い切り締め上げてくれたな。忘れたとは言わせないぞ。」
「………」
「あのクソみてぇな馬鹿力はいったいどこから出てくるんだよ…」
「…す、すみませんでした…」
「それと、俺のシャツを涙で濡らしてくれたのは構わないが、ヨダレと鼻水のオマケ付きにはもう言葉が出なかったな…」
「……………」
クレアは今一度頭を整理してみる。
昨夜は自暴自棄になり泣き叫んだだけではなく、リヴァイを押し倒して胸ぐらを締め上げた……
その上寝落ちするまで泣き叫んで、涙だけではなく、ヨダレと鼻水のフルコンボでリヴァイのシャツを汚した様だ……
弁解の余地すらないとはまさに今の状態を言うのだろう。
もうなんと言って謝ったら良いのか分からず、クレアは冷や汗をかきながら立ちすくんでしまった。
「はぁ……別に怒ってはいない。」
「兵長…?」
「お前の奇行種ぶりには散々振り回されてるからな…もう慣れたと言えば慣れた…まぁ、あの馬鹿力にはいまだに驚かされるがな…」
そう言うとリヴァイはクレアの手を取り自身の方に引き寄せた。