第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
その箱に入っていた物…
それは、薄いピンクの石がついたネックレスだった。
「………………」
クレアは覚えていた。
フレイアはエルドと出かける時はいつもこのネックレスを身に着けていた事を。
初めてでかけた日にエルドから買ってもらったのだと喜んで着けていたのをしっかりと覚えていた。
「エルドさん…」
これは、妹のマリアではなく、恋人であったエルドに渡すことはできないだろうか?
愛する人によって買ってもらった物は、愛する人の元に戻って、形見という形で存在し続けてほしい。
クレアはそのネックレスを箱にしまってエルドに届けようとしたのだが、はたしてこの価値観はエルドにうけ入れてもらえるものなのだろうか…
「…………………」
クレアは昨日の壁外調査で、フレイアの遺体の前で泣き崩れている姿を見たのが最後だった。
まだ酷く落ち込んでるかもしれない。
こんな物を持っていってまた深い悲しみを与えてしまっては大変だ。
「どうしよう……」
しかし、クレアは今朝ハンジとした会話を思い出す。
「そういえば、兵長はエルドさんの部屋に行ったってハンジさんは言ってたような…」
まずはエルドの上官であるリヴァイに確認するべきだろうか。
昨晩一緒にいたのなら、今のエルドがどういった様子なのかも聞けるし、遺品を渡すことについても相談できる。
そして何よりも昨夜の事をクレアは謝りたかった。
取り乱していたとはいえ、リヴァイの目元に傷をつけてしまったのだ。
クレアはポケットにネックレスの入った箱を入れると、リヴァイの執務室まで向かっていった。
「失礼します。」
緊張しながら扉をあけて敬礼をすると、執務室にはリヴァイとエルドの姿もあった。
様子から察するにエルドはリヴァイの仕事を手伝っていたように見える。
「あ…お仕事中に…すみません…」
「あ、いや大丈夫だよクレア…俺、もう失礼しようと思ってた所だったんだ。」
「あ、でも……」
どうしたものかとしどろもどろになっていたら、エルドは立ち上がり、クレアの前までやってきた。