第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
紅茶をだし、クレアもソファに腰掛けると、エルヴィンが早速話をきりだした。
「クレア、今回の壁外調査、色々と大変だったと思うが…大丈夫か?」
突然のエルヴィンの労いに、クレアは少し言葉を詰まらせてしまった。
「あ…あの…大分周りにご迷惑をかけてしまったのですが…その…だいぶ落ち着きました。」
「そうか…そんな中すまないのだが…明日、ミケとフレイアの妹がいる孤児院まで一緒に行ってもらえないかと思ってね。」
「孤児院に…ですか?」
「そうだ、クレアもフレイアから聞いていたと思うが、今回の壁外調査が終わったら、フレイアの妹、マリアをこの兵舎に招く予定でいたんだよ。」
そうだった…とクレアは思い出す。
フレイアが生きて帰還していれば、今頃フレイアはマリアを迎えにいっているはずだったのだ。
「はい…その話は存じております。」
「ミケが明日、孤児院まで死亡の報告と弔問に行く。もしクレアが可能ならでいい。遺品を渡してやってもらいたいんだ。」
「わ、分かりました…それでは遺品は明日の朝までにまとめておきます。」
「すまない…そう言ってもらえると助かる。」
エルヴィンはクレアの了承に少し安堵の表情を見せた。
「ですが、団長…マリアはどうなるのですか?兵舎への招待は無しになるのでしょうか…」
マリアはきっと楽しみにしていたはずだ。
「その件に関してはマリア本人の希望を聞いてきてもらいたいと思っている。こんな状況だ、姉のいない兵舎に無理矢理招待する事はできない。」
エルヴィンの言う事ももっともだ。
姉のいなくなった兵舎など、余計に悲しませてしまうだけだろう。
「承知致しました。では、私は遺品の整理をしますので、お先に失礼させて頂いても宜しいでしょうか?」
「大丈夫だ、明日は宜しく頼むよ。」
「クレア、明日は朝食が済んだら厩舎にきてくれ。孤児院までは馬で行く。」
それぞれに頭を下げて返事をすると、クレアはハンジと一緒にエルヴィンの執務室を後にした。