第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
「ハハハハッ!!かっわいい〜!」
おとなしく頬をつままれてる姿に満足したハンジは、両手いっぱいに鎮魂花を抱えたクレアと、シオンの丘を後にした。
街で軽食をとってから兵舎に戻ると、玄関には良く知る人物が1人、壁に背中をつけて腕を組み、退屈そうに立っていた。
「兵長…!?」
「あれ?リヴァイ?どうしたの?お出迎え?」
「あぁ、まぁそんな所だ。そろそろ帰って来る頃だと思ってな。戻ったらエルヴィンが執務室に来るようにと言っていた。戻ったならすぐに行ってこい。」
「え?エルヴィンが?うんオッケー!すぐ行く。」
「は、はい!あの…兵長…」
「俺はまだ仕事が山積みだ。」
リヴァイはクレアの抱えているシオンの花束に目をやると、くるっと背中を向けて行ってしまった。
「あ……」
今見たリヴァイの目の下には血が滲んでいた。
あれは自分がつけてしまったモノかもしれない。
クレアは昨夜のことを謝らなくてはと胸をざわつかせたが、エルヴィンが呼んでいるのなら行かなくてはならない。
クレアは一旦自室に戻って、バケツに摘んできた花束を入れると、すぐにハンジと一緒にエルヴィンの執務室に向かった。
「エルヴィンお待たせー!!玄関でリヴァイに会ったよ!用事ってなにー?」
相変わらずノックもなしに入室するハンジにため息をつくエルヴィン。
「あぁ…す、すみません…団長…失礼しました…」
そして上官の無礼を詫びるクレア。
そんないつものやり取りにエルヴィンは思わずクスリと笑ってしまった。
「あ、あの…」
「いや、いいんだ。まずはかけてくれ。」
促されるまま応接セットのソファを見るとミケが座っていてクレアとハンジに小さく片手を上げた。
「わ、私…紅茶いれますね!」
「クレア、いつもすまないね。」
「とんでもございません!すぐに用意致します。」
エルヴィンが礼を言うと、クレアは大急ぎで湯を沸かし、準備を始めた。