第7章 調査兵団とハンジ班と時々リヴァイ
リヴァイは自慰の最中にも関わらず、少しイライラしていた。
あの時、扉をあけたとき、ハンジだけではなく、ミケもいたのだ。
当然だが、クレアのあの声を、ミケに聞かれたはずだ。
あの声を
あの鼓膜が震えるような
痺れるような
甘い声を
ミケに聞かれた。
自分以外の男が聞いていた事に無性にイライラした。
ミケは長身で寡黙だ。その上実力があるため女兵士からカッコイイと割と人気があった。
だが、リヴァイから言わせればミケはただのムッツリだ。黙っていても頭の中はエロい事しか考えてない。そんなヤツだと知っていた。
エルヴィンに聞かれても胸糞悪いが、ムッツリのミケに聞かれるのはもっと許せない。
おそらくあいつも今頃、クレアを性の対象にして1人抜いてるのではないか。
そう考えると、はらわたが煮えくり返るような黒い感情がリヴァイを支配した。
クレアの甘い声を聞くのも、あの白くて柔らかい肌に触れるのも、あのキンモクセイの香りのする蜂蜜色の髪に触るのも、全部自分でなくては気が済まない。
こんな感情は初めてだった。
なかばヤケクソのような自慰が終わると、手を洗い、ベッドにゴロンと横になった。
自分がクレアに対して異常な独占欲があることは認めざるをえない。しかし、それの正体がまだ何なのかはわからなかった。
―リヴァイ30代、経験はあるが、まだ恋は知らない―
クレアは自室に向かい廊下を歩いていた。
足どりはどことなく軽かった。
最初のリヴァイの印象はあまり良いものではなかったが、尊敬するハンジの事をよく理解しているし、奇行種と変な呼び方をするにも関わらず、自分に対する行動は優しいものだった。
理由がなんであれ、あのリヴァイが自分にだけ特効薬をかしてくれたことが、とても嬉しかった。
まだ触れられた背中にリヴァイの手の感触が残っている。あの時の状況を思い出すだけで、無性にドキドキした。
そのドキドキの正体がなんなのかは、クレアはまだわからない。
薬を塗った箇所が、ジンジンと熱くなっている。
体中の血行が促進されているのだろう。
この調子なら明日の筋肉痛も酷くないと期待できそうだ。
今日は早く休まなくてはと、足早に自室に戻った。
―クレア18歳、経験もなくまだ恋も知らない―