第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
そんな熱い手のひらに包まれてしまえば、自然とクレアの想いも熱くなる。
「…私、ちゃんと願いたいです。フレイア達の安らかな眠りを…魂の浄化を……なのでお願いです、ハンジさんも私と一緒に、願ってください…」
クレアは目をゴシゴシと擦りながらハンジにその想いを伝えた。
「うん、いいよ。でもさ……」
「!?」
しかし、ハンジの渋るような声にクレアの潤んだ蒼い瞳は不安げに揺れる。
「ひとまず、降りてくれると助かる…かな?なんかこの構図、クレアが積極的に私を押し倒して、致してる様にしか見えないから…ちょっと私としては複雑。」
苦笑いをしながらハンジはポリポリと人差し指で頬を掻いた。
「……………!!!」
しばし沈黙の走るシオンの花畑……
クレアは自分とハンジの今の状況を改めて冷静に見てみると、確かに言われた通りだった。
仰向けになっているハンジに跨がっている自分がいる。
「え?え?あ…あの…その…ご、ごめんなさい!!私ったらなんてことを…」
すぐにハンジから飛び降りると、クレアはやってしまったとばかりにその場でうずくまってしまった。
「ハハハ…ホントにクレアは可愛いなぁ。」
「……も、申し訳ございません。感情が高ぶりました…」
「私は君の上官だ。もうこういうのには慣れたよ。でも対人格闘の訓練並みにどつかれるのにはまだ慣れないな…アハハ。」
「…すみません…」
消え入る様な声で謝ると、ハンジはもういいからと、クレアを抱き起こした。
「……………」
今一度、この丘一面に広がる紫色の花畑を眺める。
淡い紫の色合いが…小さくも見事に咲き誇る花達が、苦しんでいたクレアの心を少しずつ癒やしていくのが分かる。
「フレイア…アンドレ…リリアン…」
クレアは3人の名前を呼ぶと、両手を胸の前で組み、静かに瞼を閉じた。