第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
ハンジの胸に顔を埋めながらクレアは叫ぶように訴える。
「…シオンの花言葉なんて知りませんでした…紫色の色霊なんて知りませんでした…私は自分がどうしても許せなくて…リヴァイ兵長に八つ当たりもしてしまいました。私は本当に最低です。でも…こんな私でも、素直にフレイア達の安らかな眠りを願える場所があったなんて……あったなんて…」
「クレア……」
押し倒されたままハンジは泣きじゃくるクレアの頭を優しく撫でた。
「私は…フレイアと過ごした日々を決して忘れません……忘れたくありません。別れるのは辛いですが、安らかに眠り、迷うことなく魂が浄化するのを私は願いたいです……」
クレアは涙を流しながら今度はハンジの胸をドンドンと叩き出した。
「大丈夫…私はちゃんとクレアの気持ちも分かってるつもりだよ?リヴァイにも言われたでしょ?誰もクレアが自分を責める姿なんて望んでないって。」
「…うっ…うっ……はい……」
「そしたら願おうよ。フレイア達の安らかな眠りを。私と一緒に。」
「ハンジさん……」
するとクレアはゆっくりと起き上がる。
起き上がったクレアの顔は泣き叫んだせいで目元は腫れ、ハンジの胸に顔を埋めたせいで鼻と頬が赤くなってしまっていた。
「もう…せっかくの美人が、台無しだよ?」
「…だ…だって………」
ハンジは仰向けのままそっと両手でクレアの頬を包み込んで、滝のように流れ続ける涙を親指で拭った。
その指は細くて長くて…
その手のひらは温かくて、柔らかくて…
リヴァイの手とは全く違う感触だ。
この手は、自身の事はいつだって後回し。風呂も着替えもいつも後回しだ。休むことなく巨人の研究に没頭し、兵団の資金のために日々奮闘している。
そしてその情熱は冷めることなく滾り続け、調査兵団にとって不可欠な膨大なエネルギーを生み出している。
温かくて、熱くて、いつも情熱に満ち溢れているハンジの手。
それこそが、クレアが敬愛してやまない大好きなハンジの手だ。