第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
「そして、色にはね、色霊(しきだま)といって、色毎にいろんな意味があるんだ。」
「色霊……?!」
「そう。例えば…んーと、分かりやすい所だと、赤は情熱とか、白は純真無垢とかね。」
「は、はい…なんとなく分かります。」
「でね、紫の色霊はね……“安らかな魂の浄化を”って意味があるんだよ。」
「……え……」
「それを知ってからは、仲間の死に心が挫けそうになると、自然とここに来てしまうようになってね。とは言っても咲いてるのは秋限定なんだけど!それでも…だいぶここには救われた…この紫色のシオンの咲くこの丘にはね。」
「ハンジさん……」
「志半ばで死んでいった仲間達の安らかな眠りを願って、楽しくすごした日々は決して忘れないと誓う。ここはそんな場所にピッタリだと思ったんだ。」
「…………」
安らかな眠りを願い、楽しくすごした日々は決して忘れない…
その言葉はクレアの胸に深く染み込み自然と涙が込み上げてくる。
「あのリヴァイも、1度だけここに来た事があるんだよ。」
「そ、それって…」
「クレアも知ってるでしょ?ファーランとイザベルが死んだ時。…来たことがあるって言っても、私が無理矢理連れてきたんだけどね…」
「それじゃあ…」
「うん、リヴァイもここを知ってるよ。だから今日仕事を休んでもいいって言ったんだ。まぁあのリヴァイに花言葉だの、色霊だのなんて、どこまで理解できたかは分からないけど…あの時は黙って、文句も言わずに秋風に揺れるシオンの花をずっと見ていたよ。」
「兵長も…この景色を見た事があるんですね…」
「うん……」
心地良い秋風でゆらゆらと揺れる紫色のシオン。
小さくて可愛いその花達の無邪気な優しさに、きっとリヴァイも救われたのだろう。
その証拠に、クレアは今は自分を責める事よりも、フレイア達の安らかな眠りを願う気持ちの方が大きくなっている。
きっとこの花と色のもたらす効果なのだろう。
クレアはそう信じずにはいられなかった。