第42章 鎮魂花(ちんこんか)に想いを乗せて
ザクザクと坂道を登っていくが、しばらく行くと平らな地面に変わった。
「はーい、ストップ」
ハンジの言葉からして頂上に着いたのだろう。
素直にクレアは止まった。
「クレア、ここではどんな景色が見えると思う?」
「え?そんな事言われてもまったく想像が…だいぶ登ったので、ここから兵舎が見えたりするのでしょうか…?」
「ブブー、ハズレー!!じゃあ目隠し取るよ?」
「え?は、はい!!」
「さーん!にー!いーち!ハーイ!!!」
「あ………」
クレアの目に飛び込んできたもの。
それは視界いっぱいに広がる紫色の花畑だった。
小さくて淡い紫色の花は丘いっぱいに満開になっていて、心地よい秋風が吹けばフワッと甘い香りを運んできた。
秋風に小さく揺れるその花達を見つめながらクレアはハンジに問いかける。
「ハ、ハンジさん…この花は……」
「私さ、花には全然詳しくないんだけどね、この花はシオンっていう名前の花だよ。」
「シオン……」
クレアも特別花に詳しくはなかったため、花の名前を聞いても特にピンとくるものはなかった。
そのため、何故ハンジがここに自分を連れてきたのかも分からないままだ。
「私がここを見つけたのはまだまだ下っ端の兵士だった頃。次々に仲間を失って、当時の私も例に漏れず少し気持ちが荒れた事もあった。そんな時、フラフラと歩いてて、たまたま見つけたのがこの花畑だったんだ。」
「……………」
「まだ話が見えてこないよね?ごめん!」
ハンジは苦笑いをしながらクレアの肩をポンッと叩く。
「私がここの花畑を見つけたのは偶然。そして咲いてた花がこのシオンだったっていうのも偶然。でもね…当時この花の名前を知らなかった私は調べたんだ。そしたら偶然にも知った事が1つ。」
「ハンジさんは何を知ったんですか?」
「シオンの花の花言葉。」
「え?!」
「シオンの花言葉はね…“君を忘れない”…」
「君を…忘れない……」
クレアはその言葉に胸がキュッと痛んだ。