第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「…兵長………」
「グラス、借りるぞ。」
差し出されるままグラスを受け取ると、リヴァイも置いてあるグラスに酒をたし一口煽った。
リヴァイに何をしにきたのかなんて聞くのは愚問だろう。
ただ黙って隣で酒を飲んでいる。
口数が少なくていつもぶっきらぼうな我が上官。
でも、それだけでも十分に伝わるものがある。
隣にいるこの上官は、誰よりも多くの兵士の死を看取り、幾度となくやるせない想いを重ねてきたはずだ。
それは、自分なんかとは比べ物にならない程に…
そんなリヴァイがただ黙って自分の隣にいてくれる。
その事実だけで胸の底が熱くなる。
今のエルドには、それが何よりの慰めになった様だ。
「…兵長……ありがとう…ございます…」
「…俺は、何も礼を言われるような事はしていない。ただ黙ってお前の隣で酒を飲んでいるだけだ…」
「そ、それでもです…兵長が隣で黙って酒を飲んでるだけでも…救われる人間が…いるんです…」
「そうか……」
静かに静かに時が過ぎていくエルドの相部屋。
リヴァイの隣で、少しずつ気持ちが落ち着いてきたのか、エルドが口を開いた。
「あ、あの…兵長…」
「…なんだ?」
「本日の壁外調査では…ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした…」
エルドはリヴァイの方を向き頭を下げる。
「…頭を上げろエルド。まぁ兵士としては褒められた行動でなかったが…フレイアを亡くしたんだ…誰もお前を責めることはしないだろう。」
「……兵長……」
自分だってそうだ…
もし壁外調査でクレアを亡くしたら、その時自身の手が、脚が、思考が、どのように動くのかまったく想像すらできない。
そんな自分がエルドの行動を叱責する事など出来る訳がなかった。
「…今夜、俺は朝までここで酒を飲む予定になっている。誰に何と言われようとな。だからもし言いたい事があるなら話せ…泣きたければ泣けばいい…そのかわり、休みが明けたらあいつらにちゃんと元気な姿を見せてやれ。グンタも、オルオも、ペトラも…お前を心配していた……」
「……兵長…」
その言葉にエルドの視界は一気に涙で歪んでしまった。