第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「とにかく一旦落ち着け!!」
「い、いやぁ…!!」
ベッドに上がったリヴァイは勢いよくクレアの両肩を掴んで落ち着かせようとした。
ードンッー
「……!!」
しかし、リヴァイは向かい合ったクレアに思い切り胸ぐらを掴まれるとそのまはま力任せに押し倒されてしまった。
「………!!」
これはいったいどういう状況だ…
いきなり視界が180度回転したリヴァイは一瞬思考がストップしたが、ふと見上げると、目元を真っ赤にしながらしゃくり上げて泣いているクレアの顔。
そこで自分はクレアによって押し倒されてしまったのだと気付いた。
「ったくなんて馬鹿力だよ…奇行種…」
こんな風に胸ぐらを掴まれるのは…
こんな風に押し倒されるのはいったい何度目だ…
奇行種クレアのまったく読めない行動に、リヴァイは毎度毎度お手上げ状態だ。
「…フレイアを苦しめて…エルドさんを悲しませて…アンドレを救う事のできなかった私1人だけが…兵長の腕の中で慰めてもらうことなんて…できません!!」
「クレア…」
「前回の壁外調査後、アンドレに偉そうな事を言った自分がもう腹立たしくてしょうがないです!生き残った者には亡くなっていった兵士の意志を継いで前に進む使命があるだなんて…ハンジさんの教えを偉そうに説いた自分が情けないです…現に自分は親友の願いさえ分からずにこんなに自暴自棄になっているのに…」
リヴァイの胸ぐらを締め上げながら泣きじゃくるクレアの大粒の涙は、リヴァイの頬を、首を、伝い濡らしていく。
「…俺は…お前の気持ちが分からないとは…思っていない…」
「……え…??」
思ってもみなかったリヴァイの言葉にクレアは言葉を詰まらせてしまった。
「こんなに人間が次々に死んでいく調査兵団に身を置いてれば、いつだって、何だって分からない事だらけだ。例にもれずこの俺にだって…分からない事だらけだ。」
「………」
「自分の力を信じてやってきても、信頼に足る仲間の選択を信じても…結局結果は誰にも分からないんだ…」
リヴァイはクレアの濡れた頬にはりついた髪の毛を丁寧にはがしながら続けた。