第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「………あぁ……あの……」
ベッドの上で振り返ったまま戸惑っているクレア。
リヴァイはゆっくり近づいて、その小さな背中を抱きしめようとベッドに片膝を乗せて、腕を伸ばした。
ーパシンッー
「……!?」
しかし、リヴァイは思い切りその手を振り払われてしまった。
ただ抱きしめようとしただけだ。
何故振り払われてしまうのか分からない。
「……す…すみません…」
「……いったいどうした?」
クレアはボロボロと涙を流しながらその口を開くが、それはあまりにも酷な内容だった。
「私は…私は……もう分かりません…」
「何かあったのか…??」
「私は…この手で……この手でフレイアを苦しめ続けていたのかと思うと、もう何が正しかったのか…分からないんです…」
まだ話が見えてこないリヴァイ。
「どうしてお前はそう思ったんだ。お前はエルドが来るまで必死に救命処置をしていただろ?」
しかしクレアは首を激しく左右に振った。
「違います!!違うんです!!フレイアが最後に言った言葉は「もう…ごめん…」だったんです。それは、“もうこれ以上は無理だ”という意味ですよね?私は助からないのならばせめて最後にエルドさんに会わせてあげたいと思って、規定量以上の強心剤を投与して、心肺蘇生で必死に心臓を動かし続けました…でも、それはフレイアにとって苦痛でしかなかったのかと思うと…自分のしてきた事は単に自身のエゴで、フレイア本人が望んでなかったのに無理矢理苦しめていた事になります。」
「おい…待て、何故そうなる…」
クレアの言っていることも分からなくはなかったが、助からない可能性が高いならせめて最後に恋人に会わせてやりたいと思うのは至極当然の感情だ。
何もここまで悪い方に捉える必要はないだろうとリヴァイは思ったが、クレアはそう思わなかった。
「だって…だって…エルドさんに会わせてあげたくて懸命に処置をしたフレイアの死に顔は苦しみに歪んでいました。でも…でも…安楽死を望んだアンドレの死に顔は…とても安らかだったんです…」
「………」
そこまで言うと、再びクレアは泣き崩れてしまった。