第41章 奇行種の瞳が映したモノ
シガンシナ区の襲撃で一緒に逃げた女の子がフレイアの妹だと知ったのは調査兵団に入ってからだった。
2人は同室になった事もきっかけになり、どんどん仲良くなっていった。
恋の相談をされる様になったり、自身の悩みを聞いてもらったり。
リヴァイと結ばれた翌日の入浴ではキスマークにちんぷんかんぷんだった自分に随分と世話を焼いてもらった。
お互いに色んな事を報告し合った。
それは家族の様に
それは姉妹の様に
友人や親友以上の大切な存在だったフレイア。
そんなフレイアを今日の壁外調査で失ってしまった。
自分達は大切な存在である前に、公に心臓を捧げた兵士なのだ。
いつかこんな日が訪れても何ら不思議ではない。
でも、きっとそんな現実から目を逸らし続けていたのだろう。その証拠に自分は今日も一緒に風呂に入り、無事の帰還に安堵しながら食事ができると思って疑ってなかった。
なのに……
それなのに……
助けられなかった。
せめてエルドが駆けつけるまで命を繋ぎたかったが、それさえも叶わなかった。
「……うぅ………」
自分の無力さに腹が立つ。
それにフレイアが最後に言った言葉は「もう…ごめん…」だった。
あれにはどんな意味が込められていたのだろうか…
フレイアの死に顔は苦痛に歪んでいた。
もしかすると、無理矢理延命させたのは、自身のエゴだったのだろうか…
消えゆく命に対して自分は規定量以上の強心剤を投与し、心肺蘇生で無理矢理心臓を動かし続けた。
それは、フレイアにとって苦痛でしかなかったのではないか……
「…あぁ…あぁ……」
となると、自分は大切な親友をエルドが駆けつける直前までの間、この手で苦痛と苦しみを与え続けていた事になる。
自分はあの時、迷わず安らかに逝かせてあげるべきだったのか。
今さら後悔しても後の祭りだ。
でもフレイアの死に顔と、アンドレの死に顔は明らかに違っていた。
それが、この自問自答に対する答えなのであろうか。
何度も同じ問を繰り返しても何も見えてこない。