第41章 奇行種の瞳が映したモノ
傷の状態を診察し、冷静に判断をし、薬品を選び処置をしていく。
なんとかフレイアの事は考えないように、ひたすらに集中し、治療を施していった。
必死に自身を巨人への恨みや怒りで奮い立たせていたが、もうクレアの精神状態は限界だった。
しかし、最後の負傷兵の縫合が終わったその時だった。
「クレアーー!!!」
数人の兵士がドタバタと走る音が講堂に向かってきて、危機感せまる怒号でクレアの名前を呼んだ。
「……………!!」
その瞬間にゾクリ凍りつく背中。
そんな風に自身の名前を呼ばれるのは今日、2度目だ。
今度はいったい…いったいどんな悪い事が起こったのだろうか……
見たくない……
もう…見たくない……
クレアは怖くてすぐに後ろを振り向く事ができなかった。
「クレア!!!頼む!!!」
だがすぐ後ろまで迫ってきた声に、クレアは覚悟を決めて振りかえるしかなかった。
「…あ……あ………」
嘘……でしょ………
クレアの瞳に映ったのは血だらけのアンドレを抱えている兵士だった。
「ここから1番近い旧市街地に隠れてた巨人と戦闘になってヤラれた…処置も頼みたいが…さっきからクレアの事をずっと呼んでるんだ。とにかく聞いてやってくれ!!」
「アンドレ……?」
震える声でアンドレに近づくと、アンドレは脇腹を巨人に食いちぎられたのか、腹部に大傷を負っていた。
出血も多量で、臓器が一部飛び出してしまっている。
こんな状態で自分を呼んでるなんて、どんな話があるのだろうか…
クレアは恐る恐るアンドレに顔を近づけ呼びかけた。
「ア、アンドレ…大丈夫…?私よ、クレアよ。」
クレアが名前を呼ぶとピクリと反応し、アンドレは薄目を開けてクレアの方を見て少し笑った。
「…ハッ……ハッ…クレアさ…ん…間にあって……よかった…です。」
先程のフレイアと同様に多量の出血で顔面は蒼白だ。
それでもなんとか伝えようと必死にアンドレは声を出した。